· 

「ひとりの気付き」を「みんなの気付き」に

兵庫県たつの市立新宮小学校 主幹教諭 石堂裕

私は、生活科での子どもたちの気付きは、関わる対象に対する一人ひとりの認識であると捉えており、授業を通して、それをみんなで共有したり新たな知識と関連付けたりしながら、さらに深まることを目指しています。

写真1
写真1

例えば、ミニトマトの栽培では、こんなことがありました。

 

写真1のAさんは、誰よりも熱心に水やりを続けながら自分のミニトマトを育てている子です。ちょうど緑色の実がつき始めた6月下旬、「あれ?下の葉が黄色くなって枯れてしまいそう。」と気付きました。他のミニトマトも同じ様子でしたが、まだ誰も気付いていません。

 

写真2
写真2

そこで、Aさんの「ひとりの気付き」を「みんなの気付き」にするための時間を設けました。最初に一人ひとりが予想したことを付箋に書き出し、写真2のようにグループごとに整理した後、クラス全体で話し合いました。

 

ポイントは、子どもたちが栽培体験をふり返り、「水やりをしなかったから」や「水をあげすぎたから」の意見に傾きかけたようとしたところで、付箋への書き出しから「生長」に着目していたBさんに意見を求めたところです。

 

Bさんの「実に栄養を送るから枯れると思う。野菜の本で見たような気がする。」の発言に、心が動きはじめたみんなは、本で確認した後、実際にミニトマトを見に行きました。

 

本には、黄色くなる原因が栄養に加えて、水が足りない場合や虫の場合なども書いてあったので、それを確認するためです。確かにどのミニトマトも実より下の葉が黄色くなっており、虫はいません。子どもたちは、下の葉が黄色くなって枯れるのは、実に栄養を送るためだと結論付けました。

 

この結論に最も喜んだのはAさんでした。毎日、放課後になると全員のミニトマトに水をあげていたAさんは、付箋に「ぼくが水をあげすぎたから」と書き出していたのです。みんなから水やりの感謝の言葉も聞いたAさんは、満面の笑顔でした。「ひとりの気付き」を「みんなの気付き」にする時間は、子どもたちの心も明るくしますね。

つづく

プロフィール

さとえ学園小学校 やまなかせんせい プロフィール画像

兵庫県たつの市立新宮小学校

主幹教諭 石堂裕


なぜ、小学校の先生に?

身近な家族が教員だったため、小学生のころから「先生になる」と決めていました。小学校に決めたのは、教育実習での1年生との出会いです。授業の難しさを実感して、「もっと究めたい」と思ったことが、今も私自身を支えています。

my belief

「ピンチがチャンス!」

授業では、「ま(待つ)つ(つなげる)の(のせる)き(気付かせる)みと(認める)」