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「町たんけん」での教材研究

東京都港区立芝浦小学校 主任教諭 八木 美香

新しい日本文教出版の生活科教科書では、町探検を2回に分けて取り組む構成になっています(令和2年度版 小学校生活科 内容解説資料PDF11枚目、P.19参照)。今年度、本校でも、教育計画に示されている年間計画を見ながら、「町たんけん」を2年生の1学期と2学期に組み込むことを決めました。
2年生は七つの学級があるので、7人の担任が互いの考えを出し合い、単元をつくっていくことにしています。それぞれが高い関心をもって学び、得意としている教科・領域について担当し、具体的な案を示します。提案を受けた6人は、その具体的な内容や方法に対して、質問しながら確認したり、他教科との関連を見たりしながら進めます。

1学期の「町たんけん」は、本校に赴任したばかりの教員や、2年生の担当が初めての教員など、様々であるという現状を踏まえ、丁寧な教材研究を行うこととし、生活科を担当している私と二人の教員で、提案するための教材研究をはじめました。二人の教員と一緒に教材研究をしたことで、今まで当たり前に行っていたことを見つめ直し、より丁寧にその意味や、価値を考えながら行う作業となりました。
教材研究を担当したわたしたちには、他の同学年の先生に伝える役目もあるため、そういった面でもメリットがあります。

・「町たんけん」の訪問先を考えるにあたり考慮したこと

1. 学校から近いところ。
2. 子どもにとって関心が高いところ。
3. 2回の訪問を受け入れてくれるところ。

2回の探検をおこなう上で、1回目は、興味や関心を引き出しながら視野を広げるたんけん、2回目は、1回目のたんけんのことが詳しくなるためのたんけんとしました。教材研究段階では、教員間でそれぞれのたんけんのことを『お散歩たんけん』『インタビューたんけん』と名付けました。また、当初「バス会社」「保育園」なども候補にあがりましたが、それぞれの場所を訪問し協議を重ねた結果、たんけんする場所を「学童クラブ」「警察署」「図書館」「区民センター」の4か所に絞り込みました。実際に、子どもたちと活動を進めていくときには、地域の魅力ある場所について話し合い、子どもの興味関心を引き出しながら、各学級がそれぞれの探検先を決めたという展開にしました。

4か所に絞り込んだ理由として、たんけん初心者の2年生にとって、初めての校外たんけんの場所は、安全を意識しながら活動するために「ちょうどいい距離」にある点が重要だということ。また、「なんだろう?」と不思議に思わせる場所よりも、日常で目にする機会が多い場所は、子どもたちの関心も高く「知ってる!」からのスタートとなり、より活動への意欲付けがしやすいと感じたためです。

一般的に教員は「見つけさせたい」「気付かせたい」とせっかちに考えてしまうことがあります(教員の性分でしょうか?)。そのため、訪問先の方と、訪問する回数の打ち合わせだけで活動に入ってしまうことがありますが、それでは不十分な場合が多いのです。

そこで、1回目は『お散歩たんけん』、2回目は『インタビューたんけん』と名付けた意味を再確認しました。

1回目は、訪問先の様子を大きくとらえること。

2回目は、1回目で興味や関心をもったことを中心に詳しく知ろうとすること。

2回訪問することにより、子どもたちが1回目でもった疑問「なんだろう?」を2回目で自ら解決させること。

・学習内容に踏み込んだ打ち合わせ、内容検討の実例

訪問回数とそれぞれの日時が決まっていたので、担当する司書の先生が自主的に2回の活動内容を考えてくださっていました。

『1回目は館内全般と書庫の見学ツアー(各所での詳しい説明付き)、読み聞かせ。2回目は、本の整理や貸出のお仕事体験、読み聞かせのワザ修業講座』

その話をうかがっただけで、大人もワクワクするような内容でした。一緒に教材研究した2人の先生は「こんなに考えてくださったのに、ここに意見をするのは申し訳ない、気が引ける……」と言いました。だからと言って、このままこのワクワクツアーにそのままのるのでは、今回の町たんけんでねらいとするところに子どもたちがたどり着きません。そこで、早々と2回分の活動内容を考えてくださったことへの感謝を伝え、重ねて、この単元でのねらいと具体的な活動内容の依頼を前もってお伝えさせていただかなかったことのお詫びをしました。

その上で、単元のねらいと2回繰り返して訪問する意味や、他の訪問先(警察署や区民センターなど)での2回の訪問の概要を伝えました。すると、『1回目は、館内を大きく見て歩くお散歩ツアー、読み聞かせ。』という再提案をいただきました。

このツアーでは、本の修理をしている司書さんの姿に気付くことができるような動線が提案されました。さすが!

さらに、プロの読み聞かせのワザがちらりと見え隠れするような展開にしてくださいました。さすが!さすが!

こうなると、子どもたちが館内についてさまざまな「もっと知りたい!」「できるようになりたいな!」が生まれてくるはず!2回目の具体的な活動内容については、1回目たんけんでの子どもたちの様子から、改めて打ち合わせをすることになりました。

せっかく考えてもらっているのに再検討をお願いするのは失礼にあたるのでは?と遠慮していては、学習として成り立たなくなってしまいますし、学習のねらいをしっかりと伝えることで、教員が思いもつかないような提案をしてもらえることもあります。

ゲストティーチャーとともに活動内容をつくっていくこと、町たんけんの学習活動を組み立てる上で、そのことがもっとも重要だと、改めて実感した、今年度の教材研究でした。

つづく

さとえ学園小学校 やまなかせんせい プロフィール画像

東京都港区立芝浦小学校

主任教諭 八木 美香

 


なぜ、小学校の先生に?

元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。

my belief

「楽しい♪」の中に学びあり。