考えるための技法(思考スキル)を学習活動に効果的に取り入れることで

兵庫県たつの市立新宮小学校 主幹教諭 石堂裕

前回は「ものづくりには、素材へのこだわりが大切であること」についてお話ししました。

今回は「動く車」になるまでの過程のうち、山中昭岳先生も大切にされている「考えるための技法(思考スキル)」に注目した効果を紹介したいと思います。

「動く車」をつくる際、子どもたちに「車輪と車軸が垂直の関係になっていること」や「動力によって、ボディーとなる部分の形が異なること」に気付いてほしいと考えました。

まず、「車輪と車軸が垂直の関係になっていること」に気付かせる手立てとして考えたのは「どんぐりごま」です。子どもたちは、1年生で「どんぐりごま」をつくって遊んだ体験をしています。その体験知を活かしながら、「どうすれば長い時間、車輪は回り続けるかな」という問いをつくり、みんなで追究しました。

すると、「軸がまっすぐになっていること」や「爪楊枝は中心に刺すこと」など車輪づくりに必要な事柄を共有でき、ペットボトルのキャップと串でつくる、車輪と車軸の関係に生かされたのです。

車輪や車軸ができると、子どもたちには「ためす」思考が働きます。子どもたちが注目したのは、素材と触れ合う時間に使った坂道コースでした。

 写真1のように、子どもたちは、車輪と車軸を転がしながら、まっすぐ進むように改良していきました。

写真1

また、「動力によって、ボディーとなる部分の形が異なること」に気付かせる手立てとして、例えば、写真2のように、風やゴムといった動力に対して、比べることができるコースを用意しました。この「比べる」思考によって、子どもたちは、車がよく進むように改良を重ねます。

さらに、ヨットや競輪選手の競技する写真を提示すると、「風コースなら、風の当たる面を広くすると風がよく当たって進みやすい。」とか「競輪選手が低い姿勢になっているのはスピードを出すためだから、ゴムコースだと低い形の方が合っている。」といった「関連付ける」思考が働きました。

そうなると、子どもたちは、風を利用するのか、ゴムを利用するのかといった動力を見据えて、自分のつくりたい車のボディーを工夫し始めるのです。

写真2

やはり、子どもたちの思考が深まるには、考えるための技法(思考スキル)を効果的に取り入れる手立てが大切になりますね。

つづく

プロフィール

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兵庫県たつの市立新宮小学校

主幹教諭 石堂裕


なぜ、小学校の先生に?

身近な家族が教員だったため、小学生のころから「先生になる」と決めていました。小学校に決めたのは、教育実習での1年生との出会いです。授業の難しさを実感して、「もっと究めたい」と思ったことが、今も私自身を支えています。

my belief

「ピンチがチャンス!」

授業では、「ま(待つ)つ(つなげる)の(のせる)き(気付かせる)みと(認める)」