東京都大田区立久原小学校 主任教諭 小笠原さちえ
前回は、2年生の生活科 内容(6)『自然や物を使った遊び』の単元での「子どもたちの思いや願いを生かした単元づくり」について紹介しました。
今回の記事では、その単元についてさらに詳しく、教師の具体的な支援の観点から、前編、後編としてお伝えします。
大切なことなのでもう一度述べますが、教師は、子どもたちが、内容に沿った思いや願いをもつことができるような環境を意図的に構成します。そして、子どもたちがもった思いや願いを実現していく中で、様々なことに気付くことができるように支援をしていきます。
小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 生活編 第2節 生活科の内容 (6)『自然や物を使った遊び』には、
身近な自然を利用したり,身近にある物を使ったりするなどして遊ぶ活動 を通して,遊びや遊びに使う物を工夫してつくることができ,その面白さや自然の不思議さに気付くとともに,みんなと楽しみながら遊びを創り出そうとする。
と示されています。(※下線太字は本ページ独自のものです。)
まずは、単元の入り口である「第0次(授業時間以外)から導入」と、上記指導要領の下線太字部分にあたる「第1次 身近にある物と十分にふれあって遊ぶ活動」へつなぐ、教師の具体的な支援と子どもの姿を紹介していきます。
1.第0次から導入
わくわく広場(生活科コーナー)に、素材を集めて入れる箱(わくわくボックス)を設置し、箱の中には、教師が少しだけ空き容器などを入れておきます。
集めた素材が子どもたちにとって大切なものとなるように、段ボール箱に色画用紙を貼ったりきれいに材料名を書いたりするなど、一工夫すると良いでしょう。
すると、子どもたちは、「私の家にもあるよ。」と家から素材を持って来たり、給食のゼリーのカップなどを見て「これも、わくわくボックスに入れよう。」と言って、身近にある素材を集めたりします。
同時に、教師は、身近にある物を使った遊びの本や絵本を展示したり、読書の時間に読み聞かせをしたりします。
本の内容は、工作の本などつくり方の本に限定せず、素材の面白さや不思議さなどに気付くような絵本や、イメージをふくらませられるような絵本、「こんなふうに遊びたい!」と思えるようなお話の絵本がおすすめです。
また、素材を壁に貼ったり、飾っておいたりすることも効果的です。
子どもたちが、「これを使って遊びたい!」という思いをもつような環境をつくり、そんな言葉が出たところで単元がスタートします。
2.第1次 身近にある物と十分にふれあって遊ぶ活動
第1次がスタートした時、授業の始めに子どもたちから出た「今日やりたいこと」は、「箱で遊びたい。」「筒を使いたい。」「みんなで楽しく遊びたい。」などでした。
子どもたちが実際にしていた遊び
- 空き箱や紙コップなどを組み合わせて高く「積む」
- 空き箱などを筒で「打つ」(音を出す)
- 箱をドミノのように「並べる」
- 紙皿など円形の物を「投げる」
- 筒を耳に当てて「音を聞く」
- 筒を「転がす」
など
振り返りでは、「空き容器の中に物を入れて振ると楽器になりました。」、「空き箱を筒で打つと、太鼓のような音がしました。」など、自分たちで見つけた遊び方や、遊びを通して気付いたことが出ました。
生活科の学びは、子どもたちの多様性を生かすことで、より豊かなものになります。
小単元はあくまで大まかな流れです。時数配分やその日に想定していた内容と、実際の活動は同じようにはならないので、無理に合わせようとせず、子どもたち一人ひとりの違いに配慮することが大切です。
後編では、「身近にある物と十分にふれあって遊ぶ活動」を通して、子どもたちが様々なことに気付いたり、遊びに使う物をつくったりする活動へとつなぐ教師の具体的な支援と、子どもたちの姿についてお伝えしたいと思います。
つづく
プロフィール
東京都大田区立久原小学校
主任教諭 小笠原さちえ
なぜ、小学校の先生に?
my belief
「笑う門には福来る」
「笑顔がいっぱいの教室にも福がたくさん訪れる!」と信じています。