東京都港区立芝浦小学校 主任教諭 八木 美香
学習活動を振り返り、自身の活動の進捗状況を把握したり、それを元に次の活動を考えたりすることなどは、とても大事な活動です。
一般的に振り返りの時間では、子どもたちが話し合ったり、「振り返りカード」に書いたりすることが行われていると思います。
私の学級でもそうですが、活発に話し合い活動ができても、全員の考えを教師が聞き取ることはできません。また、学習活動の終了時に一人ひとりが振り返りカードに書いたとしても、机間指導して全員とやりとりできるわけではありません。
そこで、生き活きうぃーくるでもおなじみの石堂先生も教室に設置しているという”振り返りボックス”をヒントに、自分の学級でも”振り返りボトル”を始めてみました。
4本のペットボトルを口をつくった段ボールにはめ込み、表側には1~4の数字と振り返りの評価マーク(花マル、◎,○,△)を記入。
裏側は開け閉めできるように扉を付けて、開けると中身が見えるようにしています。
振り返りボトルに入れる玉は、スーパーボールに番号を書いたものです。班ごとに色分けされていて、玉の番号は班内の子どもたちの並び順と一致しています。
◇私の振り返りボトルの使い方◇
- 振り返りの活動を短時間で行いたいときなどに使う。
- 振り返りボトルは自分(教師)の近くに(時には持ち運びもしながら)置いておく。
<設問例>単元『つくってあそぼう』
「今日やってみようとしたことはうまくできましたか? 花マル、◎,○,△」
◇振り返りボトルを使ってみて見つけた有効性◇
- 振り返りカードを書く予定がなかったときでも、振り返りの活動を行いたいときに短時間でできる。
- 教師も子どもも、振り返りボトルにたまった玉を見るだけで、大体の傾向が見てとれる。
- 自分のそばに置いておくことで、子どもが玉を振り返りボトルに入れる姿を見て、その場で会話ができる。
ためらわずに入れる子
T「(◎に入れる様子を見て)そうだよね。カップを付けたことでうまくいったよね」
C「そう。だから、このカップに人形を乗せることができるんだよ。次は人形をつくるよ」
迷いながら入れる子
T「どんなことで迷っているの?」
C「うまく転がったんだけど、テープが外れちゃったから、◎じゃなくて〇かなぁ」
T「なるほどね。先生はまさかロールペーパーの芯とひもでタイヤみたいに転がるとは思わなかったよ。スゴイと思ったよ」
C「そうだね。◎にしよう。次の時間に外れないようにしっかりテープで留めることにするよ」
◇振り返りボトルの印象的なエピソード◇
本校の『つくってあそぼう』の最終小単元「1ねんせいのきょうだいさん(※)といっしょにあそぼう」でのこと。(※本校では、1年生と2年生が一対一でペアを組んで決まった相手を『きょうだいさん』と呼び、学習や遊びを通して交流しています。)
2年生は自分がつくったもので1年生のきょうだいさんと一緒に遊び、そのあとに「今日の活動は楽しかったですか」という設問で1年生のきょうだいさんに自分の玉を持たせ、振り返りボトルに入れてもらいました。
花マルや◎のボトルに入れてもらうとうれしそうな表情になる2年生。
1年生とお別れした後に、教室でボトルの様子を全員で見ると、花マルと◎に集中しており、○と△のボトルには入っていませんでした。
C1「すごい!みーんな喜んでくれたんだね」
C2「2年生が横で見ていたから、悪いのには入れにくかったんじゃないかな」
C3「悪いとは思っていないと思うよ。きっとお世辞じゃないよ」
C4「もしも、2年生が見ていたからだといっても、良い方に入れたくなるっていうくらい、ぼくたちのことを良いと思っているってことじゃないかな」
C5「たしかに!1年生につくったものだけじゃなくて、2年生のことも良いと思ってもらえてるってことだよね」
振り返りボトルを使って振り返る姿を担任がとらえた上で、普段の学習活動後に関わりをもつようにすると、子ども自身が自分の活動を頭の中だけで振り返るのではなく、人と対話をしながら振り返るようになりました。
人から「どのくらい?」「どんなことが?」と問いかけられたことで、単に「楽しかった!」「うまくいった!」だけではなく、
「1年生のきょうだいさんがにこにこしてくれたのを見ていて楽しいと思った」
「きょうだいさんが何度も何度もやってくれたから、きっと気に入ってくれたんだと思う。うまくいった!」
と理由や原因を考えて具体的にとらえ、それをその後の振り返りカードにも書けるようになってきました。
さて、今回の”振り返りボトル”は、4本のペットボトル(2リットル)にスーパーボールを入れるというものでした。
スーパーボールには、色と番号がついているので、どの子がどこに入れたのか明らかにできます。また、裏側から4本並んだペットボトルを眺められるので、全体の様子を見ながらの会話も生まれます。
「『花マルのボトル』『◎のボトル』にたくさん入っている。だから、今回は「うまくいった!」と思っている人が多い」
と客観視できたり、
C1「あれ?白玉の人たちが『△ボトル』にたくさん入っているよ。どうしたの?」
C2「白玉のチームは活動する場所でもめちゃってたんだ」
C1「そうだったんだ。解決したの?」
C2「うん」
C1「じゃ、次の時間はうまくいきそうだね。良かった」
と互いの悩みにまで共感できたりしました。
実は、この“振り返りボトル”の発展版としてもう一つのアイテムをつくって活用しています。
それについては、次回、お伝えしようと思います。
つづく
東京都港区立芝浦小学校
主任教諭 八木 美香
なぜ、小学校の先生に?
元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。
my belief
「楽しい♪」の中に学びあり。