
東京都八王子市立由井第三小学校
主任教諭 八木美香
私の勤務校では、前記事の山中先生の学校と違って、リモート授業は行っていません。各家庭に「インターネット環境はあるか」という調査をしたところまでが現状です。

この時節柄、「指示が来たら動くのでは遅い。指示待ちになってはいけない」と心がけて、様々な準備に取り組んでいます。
「指示待ちはダメ!」。このセリフは、常日頃、私が子どもたちに言っていた言葉でした。これまで、子どもたちが指示待ちせずに動きたくなる環境をつくって、主体的に取り組める工夫をしてきました。主体的に動く、それは教員にも言えることです。終わりの見えない緊急事態と休校期間の中で、私が「指示待ち」でなく考えた工夫は、二つありました。今回は、その二つを紹介します。
1.インターネット環境がない状態でできる課題の準備
教員:課題を渡す
児童:課題を受け取り、取り組む
↓
児童:課題を提出する
教員:学習の進捗状況を把握して、コメントする
↓
教員:返却する
児童:返却されたものを見て、振り返る
この一連の流れに心のやり取りを含めたいと考えています。一部の報道などから「学校は課題を出したまま」「学校に何もしてもらっていない」という言葉が聞こえてくるのは、心のやり取りが欠けてしまっているからではないかと考えました。
有名なメラビアンの法則で示されているように、人とのコミュニケーションにおいて人間は言語、聴覚、視覚の三つの情報から判断しており、その中で言語情報が占める割合は7%に過ぎないそうです。ましてや課題を出しただけでは、一方的な文字情報のみ。実際には7%にも達していないかもしれません。
そこで、「3密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避ける」「感染させない・感染しない」を配慮した安全、安心の手立てを講じながらも、会って、言葉を交わして、心のやり取りもしっかりとしたいと考えました。現在、課題の受け渡しのために子どもたちと会ってやりとりできるのは、週に1回だけですが、休校が長引くことを想定して、子ども一人ひとりとノートのやり取りができるようにしています。
具体的には、「家庭学習ノート」を2冊準備し、子どもと担任が1冊ずつ手元にあるようにして、毎週、交換しています。

その他、ワークシートは、綴じて「ワークシート集」として提出する形にしています。「途中だとしても、提出してね」と声掛けしながら、1冊になっているワークシート集を提出させています。それによって子ども一人ひとりの進捗状況や理解度を捉え、学校再開後の指導の資料としています。
2.リモート授業の実践に備えてスキルアップ
この先、オンラインで資料を提示する形式の課題づくりや、リモート授業になることを想定して、自身のスキルアップを目指して研修をしています。
これまでのように、目の前に子どもと黒板と教科書、ノートといった当たり前の環境で行うことができません。指導書もこれまでのようには活用できません。子どもたちにどんな力をつけるのか、何を使って、何をさせて、身についた力をどうやって見取るかなどについて、「単元ごと」「週単位」で考えています。まさに、初めての授業形態に臨むための“教材研究”です!
これをStay Homeの中、一人で考えていると、行き詰まり、不安になりますので、教師どうしが対話的に学べるように、オンラインツールを利用して自ら現状課題の共有や解決に向けての場の設定を行っています。
機器の操作にも慣れておく必要があります。リモート授業になってから操作を学ぶようでは間に合いません。パソコンに慣れている子どもが、自分がもたもたしている間に予想以上の動きをするかもしれません。まず、自分が使うことに慣れる必要があります。

私は、これまでテレビ電話ですらイヤでした。モニターに自分の姿が映るなんて……。けれどもStay Homeでは、オンラインで情報を集めなくてはならない状況です。使い続ければ、慣れてきます。慣れるしかない。自分に魔法をかけるしかありません。

Zoom(映像や音声を使ったWeb会議ツール)、Google Classroom(クラス単位で運営や管理ができるツール)、Microsoft Teams(チーム内でのチャットや会議、ファイルやスケジュール管理などができるツール)などを使って、オンラインで対面したり、情報を得たり、反応を返したりしています。とにかく使って、使って、使って学んでいこうと思っています。
つづく

東京都八王子市立由井第三小学校
主任教諭 八木 美香
なぜ、小学校の先生に?
元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。
my belief
「楽しい♪」の中に学びあり。