東京都大田区立久原小学校
指導教諭 小笠原さちえ
新型コロナウイルス感染症拡大防止の影響により、1学期のスタートが遅れ、分散登校のためクラスの児童が集まることができない、または、活動に様々な制限がある学校が多いと思います。そのような中で、どのような活動ならば安全なのか、先生も子どもたちも試行錯誤しながら進めているのではないでしょうか。
前回は、感染症拡大防止対策や休校明けに求められるスタートカリキュラム「のんびりタイム」と「なかよしタイム」についてお伝えしました。再開した学校生活をどのように進めていくのかをまず考えていかなければならない今、改めて読んでいただけると幸いです。
今回は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の影響により制限がある中での生活科について、2年生の栽培単元で大切にしたいことについてお伝えしたいと思います。
今年度の学習内容は、前回お伝えしたスタートカリキュラムと同様、例年以上に具体的な「活動」よりも、学習指導要領の目標・内容・単元の目標を正しく理解した上で、それぞれの学校でできることなど様々な状況を踏まえて考え、カリキュラムを作成することが求められると思います。例年通りの活動を「先生に言われて子どもたちが取り組む」など「活動をこなす」ということにならないようにしなればなりません。
育てたい植物を決める活動について
生活科では、今年度においても、自分または、自分たちで決める、つまり「自己決定」がキーワードとなります。年間指導計画で、野菜の栽培をどうしようかと考えている学校が多いと思いますので、自身の実践を紹介します。
夏野菜の栽培が難しい場合は、単元を入れ替えて秋から育てる野菜(コマツナ、ハツカダイコン、カブ、サニーレタスなど)ということも考えられます。ですが、もし可能であれば、花が咲いて実がなったという1年生の経験と比べながら考えることができ、他教科の学習との関連も図りやすい夏野菜をお勧めします。教科を関連させていくこともより一層求められます。
例年通りであれば、2年生のはじめに「2年生の生活科でしたいこと」をクラスで話し合い、「何か育てたい」という意見から、「何を育てたいのか」話し合い、「食べられる物がいい!」となって、「野菜を育てよう!」となるかと思います。では今年度はどうでしょうか。たとえばクラスで集まって話し合うことができない場合でも、このようにすると、子どもたちとの会話の中から課題をつくって単元をスタートすることができます。
休校中の子どもたちとの電話等のやり取りで、「植物を育てているよ」という子や「野菜を育てているよ」という子がいました。「学校でもまた、みんなで育てたいね」という会話から、「みんなにも学校でも育てようと呼びかけてみよう」ということになりました。
ですが、全員で話し合うことが難しい状況です。そこで、パネルを使って、「わたしは、家で野菜を育てています。みなさんも育ててみませんか」という子どもの声を、学年の子どもたちへのメッセージとして掲示しました。
そして、それぞれのクラスで話し合い(分散登校のため約10名ずつ)、知っていることなどを出し合って板書として残しておき、その内容をもとに自分の育てたい野菜をそれぞれ決めました。
前の時間のふせんや板書を見て「私たちも育てたい!」と共感する意見や、「この野菜は秋かな?」「畑がいいかな?」といった言葉が出ました。これらの手立てにより、子どもたちどうしの距離を確保しながらも考えたり、話し合ったりと交流することができました。
今後も、栽培活動の過程で発見したことは、ふせんやパネル、掲示板などで共有していきたいと思います。現段階では多くの制限がありますが、生活科の学びとして「求められること」を踏まえた上で、「できること」を考えました。本年度も、例年に近い形で単元をスタートできたと思います。
予想困難な状況の中でも、未来を切り拓き、たくましく生きていくことができる子どもたちを育てていくため、私たち教師も、前向きに、できることを考えていきたいものです。
つづく
プロフィール
東京都大田区立久原小学校
指導教諭 小笠原さちえ
なぜ、小学校の先生に?
小学校の卒業文集に「幼稚園の先生になりたい」と書いたと思います。幼稚園教諭として10年間勤務した後、「幅広く子どもたちと関わることができる人になりたい!」と思い、現在の道に至りました。
my belief
「笑う門には福来る」
「笑顔がいっぱいの教室にも福がたくさん訪れる!」と信じています。