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授業改善について考え合う教員集団に

東京都八王子市立由井第三小学校

主任教諭 八木美香

私が勤務している学校では、新型コロナウイルス感染防止の対策に取り組みながらも、時程や時間割は通常に近い状態で運営されています。休み時間の固定遊具やボールも、衛生面に気をつけることを条件に使用可能となりました。また、雨の日のトランプ等のカード遊びも解禁となりましたが、私の担任する6年生たちは、トランプを楽しみながらも密にならないよう自分たちで声を掛け合っていました。意識高く生活していることに感心します。

子どもが帰った職員室では、来年3月までの学習指導計画の立て直しや通知表の改訂を検討しています。特に通知表の改訂については、力が入ります。なぜなら今回は学習指導要領が新しくなって最初の年であり、ともなって通知表も非常に大きな改訂となるからです。

学習指導要領にあわせて通知表の改訂を進める。職員室に通知表の改訂の流れを掲示し、ステップ、スケジュールを共有する。
学習指導要領にあわせて通知表の改訂を進める。職員室に通知表の改訂の流れを掲示し、ステップ、スケジュールを共有する。

私は、生活科が誕生した平成の初めの頃の改訂を経験しています。当時、採用されて数年の若手だった私は、新しい指導要領と新しい教科書を持ったベテランの先生たちと、毎日のように話し合っていました。話題は、どんな子どもの姿を見取ったか、それをどのように見るのか。つまり、評価規準と評価基準の話です。これまでのようにワークテストだけで評価し、通知表を付けるのではない。ベテランの先生が子どもを見取った記録を見せてもらったり、私の授業に来てもらって子どもを見取ってもらい、その記録をいただいたりしました。さらには子どもの記録だけでなく、私の授業記録をとってもらい、授業改善の必要性や具体策を指導してもらいました。

今回の学習指導要領の改訂は、教科書が変わっただけではありません。考えてみると、生活科誕生以降に採用されている教員が増え、新規採用が毎年激増している現状において、大きな改訂は初めての経験の先生がほとんどです。そこに気付いたら、自分のペースでじっくりとやっている場合ではありません。通知表の改訂をきっかけにして、授業改善について考え合う教員集団にしていくことが私の目標になりました。

策は複数。意欲に火を付ける方法は、普段の授業づくりと同じです。

■新しい観点、評価規準で授業の評価方法を研究する(通知表委員会の教員たちと共同で)

  • まず、自分が例を見せる。
  • 互いに実践したことを情報交換する(そうすることで安心して進めていくことができるため)。
  • 教科をまたいで共通の視点を探しながら、簡潔にまとめて汎用性を高くする。
  • 研究成果を管理職の先生からご指導、価値付けしてもらう。研究の方向を確認する。
これまでの学びの蓄積や、教科横断的な観点も視野に入れながら、通知表の「行動の記録」の評価項目を検討する。
これまでの学びの蓄積や、教科横断的な観点も視野に入れながら、通知表の「行動の記録」の評価項目を検討する。

■通知表委員会による全職員対象の研修会を実施

■通知表改訂作業による新しくなった学習指導要領への意識向上

  • 教科担当ごとに改訂作業:学習指導要領、「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料、教科書、他校資料を活用
  • 各学年での確認作業:授業内容や使用ワークシートを介しての評価の実際を確認
通知表が変わる。評価が変わる。授業が変わる。変わるから改めて「学習指導要領」を、そして「指導と評価の一体化」を読み込む。
通知表が変わる。評価が変わる。授業が変わる。変わるから改めて「学習指導要領」を、そして「指導と評価の一体化」を読み込む。

最近、職員室では、

 

「このワークシートのここの記述で評価してみました」

「基準Bは、こういう姿にしました」

「新しい通知表のこの項目ってどう見取っていますか。情報量が少なくないですか」

「子どもたちに『これを見ていますよ』と先に言わないと、後出しジャンケンになっちゃいますよね」

「教師が発問を変えていかないと」

「『めあて』をしっかり設定して子どもに伝えないとね」

 

など、さまざまな意見が飛び交っています。教員どうし、ワークシート、ノート、ワークテスト、記録簿を見せ合いながら話し合うといった、とても前向きな姿がたくさん見られます。

通知表委員会。新しい観点、評価規準で授業の評価方法を研究する。
通知表委員会。新しい観点、評価規準で授業の評価方法を研究する。

教室の子どもたちはどうでしょうか。子どもたちにとって、「めあてがはっきり」していて、教師から「この姿を見て褒め励ましますよ」と宣言されて行われる授業は、頑張りどころがわかりやすいし、めあてを超えて頑張ろうとする子どもも現れます。

先日の外国語の授業では、「We have…」「We like…」の学習を数時間積み上げた上で、めあてを「書き表そう!」に設定しました。子どもたちに、「今日は、『一生懸命書くぞ!』という気持ちをワークシートで表しましょうね。その気持ちを受け取りながら、丸付けしますね」と示して、学習活動を始めました。発話する常時活動を行ったあと、ワークシートに書き込む学習活動に移りました。まず、書きたいことを発話して、書きたい気持ちがアップしたところで、いよいよ「書き表そう!」です。書きたい気持ちが文字にも表われ、みな意欲的に取り組みました。

「We have a piano.」「We like steak.」漢字の練習時よりも気合いの入った文字で書く子ども、余白にも何種類も書いてみる子ども、活動後に「I have 〇〇」と書いて、何かを握ろうとしているキャラクターが描いてあるカードを「これ、書いてみた」と見せてくれた子どももいました。

こうして、子どもがどんどん前向きに学習に取り組む姿を見せてくれると、教師の永遠の課題である授業改善に取り組む奥深さを実感するだけでなく、これまで、自身が生活科や総合の研究で子どもの姿を見取ってきた積み重ねの重要性も実感します。

つづく

さとえ学園小学校 やまなかせんせい プロフィール画像

東京都八王子市立由井第三小学校

主任教諭 八木 美香


なぜ、小学校の先生に?

元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。

my belief

「楽しい♪」の中に学びあり。