兵庫県たつの市立新宮小学校
主幹教諭 石堂裕
Withコロナでの学習は、グループでの活動が制限される分、一人ひとりの考える力を高め、主体的な学びや主体的な学習習慣づくりを生み出すことに力を入れることが大切だと考えます。
例えば3年生理科の「風とゴムの力のはたらき」の単元だと、次のような学習を仕組むことができます。3年生の子どもたちは、2年生の生活科「自然やものを使った遊び」の学習で、写真1のように、うちわを用いながら風で動くおもちゃをつくった経験があります。その経験を生かしながら、牛乳パック、竹串、ストロー、そしてペットボトルのキャップから車体をつくりました(写真2)。
さて、3年生の子どもたちは、車が遠くまで動くには、風の強さと帆との関係が大切であることをこれまでの経験から知っています。そこで、送風機を使い、風の強さ(強、中、弱)を変えた3コースをつくることをみんなで確認します。そうすると、「どのような帆を立て、どのような風の強さだと遠くまで進むことができるか」といった問いが明らかになりました。
その後は、写真3のように、それぞれの子どもたちが試行錯誤できる時間をたっぷりと設け、その都度、写真4のように根拠となる記録をノートに整理していくのです。ちょうど算数で「表とグラフ」を学習していたことも「表で整理するとわかりやすい」という概念につながりました。
ある程度の個別のデータが収集できた段階で、全体で整理してみると、「風が強い方がよく進む」ということが明らかになりました。そうすると、「今度は風の強いコースだけにして、どんな形の帆がよく進むかについて考えよう」という意識が高まり、写真5のように限定されたコースができるのです。その結果、子どもたちの思考は、帆の大きさ、形、立てる位置へと焦点化されていきます。再度、試行錯誤を繰り返す過程で、「風を受けるためには、帆は大きいほうがいいけれど、大きすぎるとバランスが悪い」といった結論につながるつぶやきも聞こえ始めました。
そこで、写真6のように、よく進む車の帆の形の共通点を探る時間を設けました。すると、横に広い工夫をしている帆が安定した走りをしていることが明らかになりました。そうなると、ますます実験に力が入ります。もちろん帆の形も横に広いものへと変わってきました(写真7)。
既製品の実験車だと、自ら考えることが限定されますが、自分の考えた帆(材料は画用紙)だと試行錯誤できます。このようなアナログでの試行錯誤とデータ収集が、プログラミング教育やこれからの時代に求められるSTEAM教育(※)につながりますね。
※STEAM教育:STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の五つの頭文字を組み合わせた造語。この五つに焦点をあて、めまぐるしく社会が変わっていく中で、自ら考え、課題を見つけ、新たなものを生み出せる能力をもつ人材を育てることを目指した教育。
つづく
プロフィール
兵庫県たつの市立新宮小学校
主幹教諭 石堂裕
なぜ、小学校の先生に?
身近な家族が教員だったため、小学生のころから「先生になる」と決めていました。小学校に決めたのは、教育実習での1年生との出会いです。授業の難しさを実感して、「もっと究めたい」と思ったことが、今も私自身を支えています。
my belief
「ピンチがチャンス!」
授業では、「ま(待つ)つ(つなげる)の(のせる)き(気付かせる)みと(認める)」