⼈との関わりを通して考えを広げる場⾯の⼯夫

東京都大田区立久原小学校

指導教諭 小笠原さちえ

現在、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を講じる関係で、ほぼすべての学校で活動に制限があり、試行錯誤を重ねながら日々の学習活動を進めていることと思います。

前回は、その制限がある中での生活科について、栽培単元の導入の工夫をお伝えしました。特に、学習活動の中でも生活科など、今まで授業づくりで大切にしてきた、友だちやゲストティーチャーなどの「人との関わり」を通して考えを広げる場面(交流場面)において、制限が多くなってしまうのが難しいところだと思います。

そこで今回は、栽培単元を例にして「交流場面の工夫」、主に友だちとの交流についてお伝えします(地域の野菜博士、栄養士、読書学習司書、地域の図書館の司書などゲストティーチャーとの交流については、次回お伝えします)。

栽培単元の導入(育てたい植物を決める活動における工夫)については、前回の記事をご参照ください。

参考:新しい学校生活での生活科について(2020年6月10日)

「育てている野菜についての気付きを交流する場」の工夫

今年度は、「家で野菜を育てているよ。学校でもまた、みんなで育てたいね」「みんなで野菜を育てよう」という子どもたちの声から、それぞれ春から夏に育てられる野菜を考えて、自分が育てたい野菜を決めたところから始まった本単元ですが、その野菜たちがぐんぐん成長してきました。

例年の栽培単元では、毎朝の世話を通して発見したこと(「○月○日 黄色い花が咲いた」など)をふせんに書きました。そして、数枚になった頃に「野菜のニュースを発表したい」という声があがり、野菜ごとに少人数(3〜4人程度)のグループをつくりました。発見したこと(ふせん)を見て話し合いながらトップニュースを選び、グループごとに伝え合う活動を行っていました。

ところが今年度は、グループでの近距離での話し合い活動に制限があります。そのため、気付いたことの交流は、譜面台を活用した小パネルにふせんを貼ったり、ミニホワイトボードを黒板に貼って各時間の後半に学級全体で見合いながら話し合ったりするという方法を取り入れています。

写真1 ふせんが増えてきたら子どもたちに気付きの整理を促し、「は・くきのこと」「花のこと」「みのこと」などのテーマに分類する。
写真1 ふせんが増えてきたら子どもたちに気付きの整理を促し、「は・くきのこと」「花のこと」「みのこと」などのテーマに分類する。

【写真1のふせんに書かれた記述の例】

・このまえ大きなはがあったのできりました。

・くきに虫がいた。

・ピーマンが3こできました。

ふせんは野菜ごとに一つのパネルにしました。項目は、ふせんが増えてきたところで、途中までヒントを示して「これは何のことかな?」と気付くことができるように促してテーマを決め、「は・くきのこと」「花のこと」など分類しました。そして、友だちのふせんを見て、「いいね」と思ったら、星シールに自分の名前を書いて友だちのふせんに貼ることができるようにしました[この手立ては、気付いたことの内容の価値付けが目的ではなく、見合うこと(交流)が目的です]。

写真2 休み時間や家で取り組んだこともふせんに記入し、パネルに掲示。
写真2 休み時間や家で取り組んだこともふせんに記入し、パネルに掲示。

また、授業中に気付いたことは、子どもたちが活動の中で発見したらその都度ミニホワイトボードに記入して、黒板に貼ることができるようにしました。そして、授業の終わりの話し合いで取り上げるのは、厳選した二つ、三つ程度にして、後は次の休み時間や、下校前であれば次の日まで黒板に掲示しておきます。そうすることで、子どもたちは、自然に自分と同じ野菜や違う野菜の様々な発見を見るようになりました。

写真3 気付いたことを各自、ミニホワイトボードに記入し、黒板に貼って交流する。
写真3 気付いたことを各自、ミニホワイトボードに記入し、黒板に貼って交流する。

【写真3のホワイトボードに書かれた記述の例】

・前よりいっぱいかれていてしんぱいです。はやくさいてほしいです。

・かかしをつくりました。

・きゅうりがどんどんふとっています。

・すこし大きくなったから、もうすこしでしゅうかくできそうです。

写真4 繰り返すことで、交流を通じて、友だちの野菜と比べたり、友だちの成長に気付たりする。また、次の活動への意欲をもつことができるようになる。
写真4 繰り返すことで、交流を通じて、友だちの野菜と比べたり、友だちの成長に気付たりする。また、次の活動への意欲をもつことができるようになる。

【写真4のホワイトボードに書かれた記述の例】

・まえは一つだけだったけど、二つ目がしゅうかくできた!

・上のほうにみがたくさんできた。

・花が5こさいて、みが2つなっていました。

・○○ちゃんが「ピーマンの肉づめはどう?」といって、わたしが「いいね」といいました。

学習の振り返りカードには、「友だちの発見に驚いた」という友だちの野菜と比べながら考えている内容や、「みんないろいろ考えていてすごい」などの、友だちの成長に気付き、自分の次の活動への意欲が感じられる内容が見られました

グループでの話し合い活動の時間よりも、自分の野菜にはたらきかける時間を十分に取ったことで、子どもたちは、世話のしかたや関わり方などの1年生の頃の栽培活動の経験を生かして、一人ひとりが自分の野菜に心を寄せながら、支柱を立てる・肥料をあげる・虫除けを付ける・枯れた葉を取る・脇芽摘みをするといった必要な世話を考えて行ったり、よく見る・触る・匂いを嗅ぐ・話しかけるといった方法でじっくり観察をしたりと、それぞれに深く関わることができました

次回は、地域の野菜博士、栄養士、読書学習司書、地域の図書館の司書などゲストティーチャーとの交流における工夫についてお伝えしたいと思います。

つづく

プロフィール

さとえ学園小学校 やまなかせんせい プロフィール画像

東京都大田区立久原小学校

指導教諭 小笠原さちえ


なぜ、小学校の先生に?

小学校の卒業文集に「幼稚園の先生になりたい」と書いたと思います。幼稚園教諭として10年間勤務した後、「幅広く子どもたちと関わることができる人になりたい!」と思い、現在の道に至りました。

my belief

「笑う門には福来る」

「笑顔がいっぱいの教室にも福がたくさん訪れる!」と信じています。