Chromebookがやってきた! 教室での実践例と問題点

東京都八王子市立由井第三小学校

主任教諭 八木美香

私の所属校では、全児童にChromebookが配布されました。いかに活用して授業を充実させていくか、ということを日々考えて実践しているところです。

今回はその中からいくつかの実践例と、これから解決していくべき問題点を整理してみようと思います。

すぐ使えるように「自分の荷物、大改造!ビフォー&アフター」

現在、私は5年生の学級担任をしています。一人ひとりがChromebookをサッと取り出せて、すぐに使えることが大事だと考え、学級開き当初に「自分の荷物、大改造!ビフォー&アフター」と銘打って、まずは机とロッカーの使い方を大改革しました。

■机の中:道具箱のふたと本体を活用した二つの引き出し

引き出し1:これまで通り、ハサミ、のり、色鉛筆などの道具(持ち帰りナシ)、読みかけの本

引き出し2:連絡帳入り連絡袋と筆箱(持ち帰り)、Chromebook(帰りに充電BOXへ)

■ロッカー:一人一箱の個人ロッカーと、二人で使う共同ロッカー

個人ロッカー:ランドセル、上着、図書室で借りてきた2、3冊目の本

共同ロッカー:教科書、ノート

二人分の教科書が並ぶ共同ロッカー。段ボール箱を引き出し代わりに
二人分の教科書が並ぶ共同ロッカー。段ボール箱を引き出し代わりに

教科書、ノートなどは毎時間ロッカーに行って出し入れする必要がありますが、休み時間の習慣になれば苦にならないと思われます。さらに「次の時間の教科は〇〇だな。〇〇〇の続きだな!よし!」という気持ちになるようで、休み時間に次の時間の学習活動について担任に話し掛けてくる子どもが増えました。ひょんなことから学習意欲の向上に役立っているようです。また、机の中も快適に出し入れができるようになったように見えます。

さぁ、これで快適にChromebookを取り出して、使える環境が整いました。

Chromebookを前に現れる「イイデスカ星人」や「バイーノ星人」

「Chromebookは、担任が教室にいるときには使える」という約束で始めたため、子どもたちの休み時間の教室在室率が激増しました。初めのうちは、「〇〇を調べていいですか」「YouTubeで〇〇の動画を見ていいですか」という声がたくさん掛かりました。

ちなみに私の学級には、「ナゾの星からやってきたイイデスカ星人とバイーノ星人」がイラストで存在しています。

イイデスカ星人の特徴

自分で考えず、判断せず、「いいですか?」と聞き、その結果を「〇〇していいって!」と言いふらす。「だって、先生がいいっていったもーん!」とイバる。

 バイーノ星人の特徴

「〇〇すればいいの?」とよく聞いてくる。これ以上のことを考えようとしない。アイデアが貧困。ごまかしちゃう。失敗はきらい。とにかく速く終わることに命がけ?

教室に棲みつく? バイーノ星人とイイデスカ星人
教室に棲みつく? バイーノ星人とイイデスカ星人

Chromebookを前にして「アニメキャラのこと、調べてイイデスカ?」と担任に尋ねる子どもの声に、別の子どもから「イイデスカ星人だ!」と声が掛かり、イイデスカ星人になりかけた子どもは自分で考えて、判断します

「YouTubeでメダカの産卵の動画見てイイデスカ?」の声にも「出た!イイデスカ星人!」の声が掛かり、「イイデスカ?」をやめて、自分で考えるというやり取りを繰り返しています。

一人一台の端末が配られた意味を考えながら、使い方のルールを話し合う

さすが、子どもたちは臆することなくChromebookをどんどん使いこなします。係活動のポスターやみんなへの呼び掛けのチラシを「スライド」で作成し、友だちどうしでIDを教え合って共有するという技まで到達しました。すると、「今度の土曜日に公園で遊ぶ人大募集!」のポスターを自分の仲間に送る子が出てきたり、上手に描けたイラストを友だちどうしで共有する子、面白イラストを友だちに送って友だちのビックリ・ドッキリの様子を楽しむ子、写真を撮りまくる子など、「担任が教室にいるときに使ってよい」から始まったほんの二日程度でここまでに発展しました。

私は、授業終了後に全員のChromebookを点検しました。マイドライブや共有ドライブの中、撮った写真が保存される「ピクチャー」フォルダやGoogle Chromeの中の検索履歴などです。

翌日に「『〇〇してイイデスカ?』とならずに、じっくり判断してパソコンを上手に使っているかな?」「『電源オフにすれバイーノ』ってわけではなくて、みんなの使用方法がパソコンに記録されていて、だれが何をしたのかが分かったよ」と前置きをして、つくったものがマイドライブに保存されていたり、友だちと共有されたりしていることや、見ていたYouTubeも全部確認できたことを伝えました。

そこで、今度は学校で子ども一人ひとりにパソコンが配られた意味を考えながら、使い方のルールを話し合いました。

話し合いで決まった「使い方のルール」

  • 学習、係活動に使う。
  • 学習に関する調べ物は、授業中にする。
  • 学習の続きの調べ物は、家でやり、家庭学習ノートに記録する。
  • 写真は人を撮らない。
  • 趣味のものは、家のパソコンやスマホでやる。

使い方のルールが決まると、中休み、昼休みにパソコンを抱えて教室に留まる子どもが激減し、元気に外遊びしていた子が復活しました。

国語、理科、社会でのChromebook活用法

このような約束ができてきた現在、国語、理科、社会でChromebookを使っています。まずは、学習活動で使っているときに気をつけていること、続いて各教科でのGoogle Jamboard(クラウド上で使えるホワイトボード。以下、Jamboard)の活用について記します。

■気をつけていること

調べものでは…

参考資料が載っているページをワードやドキュメントでつくってPDFに変換し、Google Classroom(クラス単位で運営や管理ができるツール)で提示し、他のページに渡り歩いていくようなことのないようにしています。子どもに検索エンジンで「〇〇〇」と文字を打ち込ませての検索はさせていません。

子どもたちには、「今まで印刷したり、スクリーンで資料を見せたりしていたときと同じですが、パソコンを使って一人ひとりの手元で見やすいようにしています。資料から読み取ったことを『そう、そう。私も同じところを見たよ』『なるほど。そういうふうに見るのか』というふうにみんなで話し合うところに学びがある。他のページに渡り歩いてしまうとそれができません」と伝え、ネットサーフィンはなくなりました。

打ち込みでは…

文字を打ち込むことに慣れてほしいとは思っていますが、それが学習のめあてではありません。そこで、外国語の教科書のローマ字のページを活用できるようにロッカー内に常備するようにしています。また、共有の打ち込みの場面でうまくいかない子どもには、鉛筆で書けるようにプリントアウトしたものを数枚用意しておきます。

※本来、どのようにするのが一番よいかは、様々な方から情報を得たり、ご指導いただいたりして、さらに研究していきたいと思っています。

■Jamboardによる実践

国語

物語文。登場人物、特に主人公の心情の変化を追いながら読む教材でした。音読、話し合い、板書、ノートまとめなど通常の学習をした後に、Jamboardの共有データを活用。場面ごとに主人公の心情を色で示しながらふせんカードでまとめました。

子どもたちは、場面ごとに主人公の心情に近いと思う色のふせんを選んで記入する
子どもたちは、場面ごとに主人公の心情に近いと思う色のふせんを選んで記入する
場面1~4の主人公の気持ちの移り変わりが色の変化からもわかる
場面1~4の主人公の気持ちの移り変わりが色の変化からもわかる

理科

発芽の学習のときに、種から出てきた白くて長いものについて「これは、根っこ?葉っぱ?」という議論になり、「Jamboardで投票しておこうよ!」と声があがりました。「根っこの人は黄色、葉っぱに人は黄緑で投票しよう!」と決めて、Jamboardの共有データを活用。選択したふせんカードに名前を書いて貼り付けるという形で、記録しました。

 「この根は葉っぱになる? 根っこになる?」のお題に対して、葉っぱの人は黄緑色のふせんに、根っこの人は黄色いふせんに記名をして投票する
「この根は葉っぱになる? 根っこになる?」のお題に対して、葉っぱの人は黄緑色のふせんに、根っこの人は黄色いふせんに記名をして投票する

その後、根っこだということがわかり、葉っぱに投票した子が「確かにね。根っこになって栄養吸い上げてから葉っぱだよ! 太陽さーーん!」と大きなゼスチャーを交えて言い、みんなで大笑いしました。さらに、「根っこになって栄養を吸うのはわかるけれど、栄養を吸うまでの栄養はどこから来るの?」という疑問になり……つづきは機会があればまた紹介します!

社会

瀬戸内海式気候。Jamboard上のレーザーポインタを動かして、二つの山地に挟まれている地形に風が通り抜ける様子を示しました。始めは、子どもたちは閲覧のみで提示し、ある程度、理解が進んだところで、子どもたちも編集できるようにして、風を表現したり雨を降らせてみたりと、みんなで動かして理解したことを画面上で楽しみました。

レーザー ポインタを選択して、任意の箇所をハイライト表示しながら風が通り抜ける様子を示す
レーザー ポインタを選択して、任意の箇所をハイライト表示しながら風が通り抜ける様子を示す

写真右側の「山地」が反転しているのは、太平洋側気候と日本海側気候を学習した際の教科書の図を二つ使用したからです。「もしこの山が二つ、両側にあったらどうなるかな」と問い掛けました。子どもたちにとっては見慣れた図だったので、「わ! 先生、反対にしてくっつけたの!?」と教室では大笑いでした。「そうです。二つあったらどうなるかな?」の問いに、子どもたちが「ええ? その間にいるの?」「どうなるんだろ?」考え始めたところで、レーザーポインターで風をびゅーっと吹かせると、「おお!」「風が吹いた!」「海から来た風!」「雨雨雨!」と大盛り上がりでした。

まだまだ試行錯誤とも言えないほどの模索中の状態です。基本は、子どもたち一人ひとりの学習内容をより確実にするための道具であり、教師も子どももその操作のために力を使い果たしては本末転倒です。しかし、子どもたちに安心、安全にインターネットの世界に関わらせることを教えることも教師の役目。さらには、経験年数の浅い教師が多い、昨今の教師サイドの事情も相まっています。教科書付属の指導書には、所属校で使用する端末の活用法が載っているわけではないので、生み出す必要がある……。困難だらけですが、前進あるのみです。

つづく

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主任教諭 八木 美香


なぜ、小学校の先生に?

元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。

my belief

「楽しい♪」の中に学びあり。