コロナ禍における2年生の「地域と公共施設」の単元づくり

東京都大田区立久原小学校

指導教諭 小笠原さちえ

7月に入り、子どもたちは夏休みを楽しみにしているようです。皆さんの学校では、今年度も引き続き新型コロナウイルスの拡大防止対策をして、日々試行錯誤しながら「安全」と「実りある学び」の両方を考えて実践を重ねていらっしゃると思います。そこで今回は、コロナ禍における生活を楽しく豊かにするための工夫、2年生の地域と公共施設の単元づくりについてお伝えします。

本単元は、コロナ禍においてどのようにすれば単元の目標を達成できるのかを考えたときに、最も課題が多いかと思います。

1. 年間指導計画を見直す

まず、可能であれば年間指導計画を見直し、本単元を行う時期を考えます。

本校では、コロナ禍以前は1学期に地域や公共施設の単元を行っていました。しかし、緊急事態宣言中に校外の施設等を訪問することが難しいため、これまで2学期の始めに行っていた身近な生き物の飼育単元と本単元を入れ替えて行いました。状況に応じて、1学期に公共施設の探検を行い、2学期に町へと広げていったり、身近な生き物の飼育も1学期から始めて2学期へとつなげたりするなど、2単元を並行して行っていくことも可能です。

訪問する施設等については、コロナ禍においても比較的受け入れ可能な公共施設やそこで働く人と関わる機会を多く設定しました。

2. 学習指導要領を確認する

続いて、小学校学習指導要領解説生活編で内容(3)と内容(4)について確認します。

(3)地域に関わる活動を通して,地域の場所やそこで生活したり働いたりしている人々について考えることができ,自分たちの生活は様々な人や場所と関わっていることが分かり,それらに親しみや愛着をもち,適切に接したり安全に生活したりしようとする。

(4)公共物や公共施設を利用する活動を通して,それらのよさを感じたり働きを捉えたりすることができ,身の回りにはみんなで使うものがあることやそれらを支えている人々がいることなどが分かるとともに,それらを大切にし,安全に気を付けて正しく利用しようとする。

3. 自分の言葉でイメージする

次に、上記の内容を具体に置き換えます。簡単な言葉でよいので教師が自分の言葉でイメージしておきます。単元の目標とも重なりますが、ここを自分の言葉でイメージして頭に入れておくことが大切です。

具体的にイメージしておくと、活動している子どもたちの姿の中から、評価につながる声かけ、支援すべきこと、取り上げる姿が単元で一貫します。規準を明確にもちながら一貫した指導や支援をしていくことが、子どもたち一人ひとりが自分なりの概念(本単元では、「地域と公共施設」が自分たちの生活にどのように関わっているのか)を形成することにつながると思います。

例:

久が原の町や人と関わる活動を繰り返し、自分たちの身の周りの地域である久が原の町について考え、素敵な場所やすてきなことがあって、すてきな人がたくさんいる素晴らしい町だということに気付き、これからも自分たちの町や人と関わっていこうとするようになる。

例:

久が原図書館や久が原特別出張所(大田区役所)を訪問し、見学や利用する活動を通して、それらのよさや、自分たちの生活を支えている所だということ、また、それらはみんなで使う所や物であり、そこには自分たちの生活を支えているすてきな人がいるということに気付き、これからも関わろうとするようになる。

このように、なぜその単元に取り組むのかを考え、子どもたちがどのように生活するようになってほしい、つまりどのような資質・能力を育てるために取り組むのかを明確にもってスタートします。

本単元は、前半は内容(4)公共物・公共施設の利用、そして、そこから地域の他の場所へ広げ、内容(3)地域と生活に取り組むこととしました。それでは単元の実際についてです。今回は公共施設に重点を置いてお伝えします。

小単元1:単元の始めに「自分たちの住む町」について考える

単元の始めには、自分たちの住む町について考えました。まずは、一人でウェビングを使って考えます。単元の初めの段階において、町のお店と公共施設の違いは、子どもたちにとってそこまで明確ではないと考えられるため、町にどのようなところがあるか知っていることをとにかくいろいろと出します。そして、一人で考えた後にグループや学級で交流します。ここは単元の導入であるため、知っていることが前提になりすぎないように気を付けます。

子どもたちは、自分が卒園した園や、公園、児童館、図書館などよく遊ぶ場所、それからよく買い物に行くお店などを挙げていました。

次に、まずはどこへ行きたいかを考えます。本校では、図書館を知っている子どもたちの「読み聞かせなどのイベントがあるよ」「絵本のコーナーがあるよ」などという様々な声から「楽しそうな場所である地域の図書館へみんなで行こう!」ということになりました。

小単元2:図書館への1回目の訪問──施設の見学

地域の図書館への1回目の訪問では、見学をさせてもらいました。図書館にあるものについて教えてもらい、学校へ帰って図書館で発見したことを交流することで、久が原図書館は、「素敵なものがたくさんある楽しいところだという」ことに気付いていました。

そして、「図書館で本を借りたい」「読み聞かせのお部屋で読み聞かせをしてもらいたい」「質問をしたい」「お仕事のお手伝いをしたい」など新たな思いや願いが生まれ、もう一度訪問することにしました。

図書館で見つけたすてきなもの、こと、人をふせんに書き出して共有する
図書館で見つけたすてきなもの、こと、人をふせんに書き出して共有する
1回目の訪問後の振り返り。個別の気付きをみんなで共有する。共有した後で観点をみんなで確認する。1回目は「人」への気付きが少ないが、2回目の訪問の後は多くなった
1回目の訪問後の振り返り。個別の気付きをみんなで共有する。共有した後で観点をみんなで確認する。1回目は「人」への気付きが少ないが、2回目の訪問の後は多くなった

小単元3:図書館への2回目の訪問──図書館の魅力を伝える

2回目の訪問を通して、図書館やそこで働く人の素敵をたくさん見つけ、「久が原図書館の魅力を伝えて有名にしよう」という活動へと発展しました。「魅力」という言葉も子どもから出て、魅力とはどういうことかも考えを出し合い、共有しました。

久が原図書館へ繰り返し訪問して関わったたことで、ものやことへの魅力だけではなく、「〇〇さんがね」と人の名前がたくさん出ていました。その後も子どもたちは、図書館へ行く機会が増えたようで、日記にも「友だちと一緒に行って〇〇さんにあいさつしました」「家の人とも行きました」と書いている児童がいました。

図書館やそこで働く人の魅力を伝える方法と、その日にやりたいことを各自で考え、ホワイトボードに記入して共有する
図書館やそこで働く人の魅力を伝える方法と、その日にやりたいことを各自で考え、ホワイトボードに記入して共有する

小単元4:地域でお散歩探検をする

図書館への2回の訪問後、今度は「町のほかの所も行ってみたい」ということになり、みんなで地域を歩きました。そして、お散歩探検で見付けたものやことを交流すると、「もう一度行きたい」、「詳しく知りたい」という思いや願いが出ました

校内では、ねらいに合わせて環境構成を工夫することも支援として有効です。地域や公共施設に関する本を展示しておいたり、自分たちの生活を支えている人や場所の写真や、活動の様子の写真を掲示しておいたりします。そのようにすることで子どもたちが思いをもって活動に取り組むことができるようになったり、比べる・試行錯誤するなどしたり、考えを広げる・深めるなどしたりすることができるようになります。単元の前半は、場所や物の写真が中心ですが単元の後半には人の写真も多くなりました。

地域や公共施設に関する本を展示したり、地域の人や場所の写真を掲示したり、ねらいに合わせて環境構成を工夫する
地域や公共施設に関する本を展示したり、地域の人や場所の写真を掲示したり、ねらいに合わせて環境構成を工夫する

生活科は、「子どもたちが自分の生活を楽しく豊かにしていく」教科です。そのため、単元の始めと終わりだけではなく、途中においても、子どもたちの生活とつなげることを意識します。自分の生活とつなげて「〇〇はとても楽しいところだよ」と新たに知った場所を紹介したり、みんなで行ったところを家の人に紹介し「家の人と行きました」となったりすることを通じて、子どもたちが自分の生活を楽しく豊かなものにしていくようにするのです。

小単元5:もう一度行きたい・詳しく知りたい所へ訪問する

そして、それぞれ自分が興味をもった所へ訪問しました。お店などもありますが、児童館など子どもにとって自分の生活を楽しくしてくれる所へも行きました。訪問した子どもたちは、自分たちが利用していない時にどのようなことをしてくれているのかなどを知り、より魅力を感じることができたようです。

昨年度は、このタイミングで、本校の校舎とつながっている久が原特別出張所(大田区役所)へみんなで訪問しました。実は、出張所は自分たちの教室の下にあり、校舎の秘密のドアでもつながっているのですが、あえて子どもたちには教室の下には何があるのか話さずにおきました。出張所の方から「みんなが学校生活を送っている姿を見かけたり、音が聞こえたりしていた」ことを聞いて、子どもたちは、出張所がとても身近なところにあって、〇〇さんや〇〇さんというすてきな人がいたということ、今まで気付かなかったことに驚いていました。

ここでは、出張所の方々に案内と説明をしてもらい、出張所はどのようなことをしている所なのかということを知ることができました。また、台風などの災害が起こった際に避難所となることや、暑い日には休憩することもできること、外にはAEDが設置されていることなど、自分たちの生活を支えてくれる身近なところであることに気付くことができました。

以前よりお伝えしていますが、今回の学習指導要領の要として、社会に開かれた教育過程が挙げられています。学校・子どもたちも身近な社会と連携して、より良い未来・社会をつくっていくようにすることが求められています。

より良い未来・社会を創っていく子どもたちを育てるためにも、身近な生活の中に大切なものがたくさんあることに気付いてほしいと思います。自分たちの地域が子どもたちにとって自分たちの生活を支えてくれるすてきなところであり、すてきな人がたくさんいるところだということに気付き、大切にしようとすることで、これからの生活や総合的な学習の時間などで地域や身近な社会をよりよくしていこうと問題に目を向けて取り組んでいくことができるのではないかと思います。

つづく

プロフィール

さとえ学園小学校 やまなかせんせい プロフィール画像

東京都大田区立久原小学校

指導教諭 小笠原さちえ


なぜ、小学校の先生に?

小学校の卒業文集に「幼稚園の先生になりたい」と書いたと思います。幼稚園教諭として10年間勤務した後、「幅広く子どもたちと関わることができる人になりたい!」と思い、現在の道に至りました。

my belief

「笑う門には福来る」

「笑顔がいっぱいの教室にも福がたくさん訪れる!」と信じています。