1人1台を支える仕組み[1]~意識改革ではなくシステムづくり~

さとえ学園小学校

教諭 山中昭岳

どの学校でもできる仕組みづくりを

本校のICT環境は、2018年度より1人1台のiPadをBYAD(Bring Your Assigned Device:教材費として保護者負担で、学校が3年リースで一括整備して常時使える1人1台専用端末として貸与)の形態で学力向上を目的に導入し、GIGAスクール構想の3年先行して実践してきています。

導入当日までに、児童会で設定した1人1台iPadのスローガン「iPadはかしこくなるための道具だ!」をもとに、クラス代表委員会等を経て1人1台iPadとのつきあい方についてのルール等を設定していきました。

導入当日は、全学年で授業にて児童と保護者が一緒にiPad受け渡しワークショップを行い、家庭でのルール等を話し合って決めてクラスで共有し、その日から持ち帰りをスタートさせました。

しかし、導入後は様々な混乱と失敗を繰り返すこととなり、それらを解消する取り組み(本ブログでも紹介したレベルアップ型ルールなど)を生み出して進めていきました。導入3年後の2021年度より3年生以上でCYOD(Choose Your Own Device:保護者負担で学校側が指定した端末を購入)の形態へと変化しています。2年後の2023年にはBYOD(Bring Your Own Device:保護者負担で個人が所有する端末)を予定しています。

「日本の学校のロールモデルとなる」を合言葉に、私立だからできるではなく、どの学校でもできる仕組みづくりを意識した1人1台導入を目指しました。本ブログでは、その仕組みを紹介し、GIGAスクール構想の導入時の取り組みの参考になればと願います。

「平等」ではなく「公平」に重きを置き、目的達成の方法を探る

今、突然の休校が余儀なくされる現状にありますが、どの学校にも学びを止めない取り組みができる環境・アイデアがあると思います。本校が一斉休校のときにすぐにオンラインによるリモート授業が実現できたのは、「アジャイル化」があったからです。

全家庭にWi-Fi環境がないので一斉にオンライン授業をやってはいけないという平等ではなく、公平に重きをおき、全員が方法は違っても目的を達成することができるやり方を目指しました。

オンラインができないご家庭があるのであれば、そこはアナログ(ワークシートや紙ベースのもの)でやればよいですし、全家庭が必ずつながっているツール(保護者メールやホームページなど)があったので、それを通してつながることができます。オンラインを足かせにせず、そしてオンラインをすることが目的ではないということをもう一度確認して、学びを止めない取り組みを進めてもらいたいです。

やっていく中でつじつま合わせをするのではなく、いいと思うことを修正ありきで進めていきます。子どもたち、保護者も巻き込みながらこのような取り組みを繰り返していきます。新しい何かを取り入れる、生み出すときには完璧なものはあり得ません。「よかった」「悪かった」で一喜一憂するのではなく、記録に残し、原因を突き止め、修正し、よりよいものへと進化させていくことです。こういう考え方が、変革を求められている教育の世界において必要だと思っています。

「先生たちの意識改革」ではなく「システムづくり」を重視

さて、本号より、1人1台端末の活用を支える仕組みについて紹介していきます。まずは、先生たちの意識改革ではなくシステムづくりを念頭にチームをつくっていきました。

1人1台端末の導入に向けて初めに行ったことは、ICT担当メンバーづくりです。当初8名で構成しました。この8名はICTスキルに長けていたからというよりもコミュニケーション力が高かったり、批判的に物事を見ることができたり、1人1台端末導入に消極的だったりと、多様性をコンセプトとして構成しました。このメンバーで生み出していくことで、学校全体での動きは速かったです。

また、もう一つ大切にしたことは、情報の共有です。情報が入ってこないことは不安であり、不安は不信感を生み出し、動けなくなります。そこで、Slack(チームコミュニケーションツール)を導入し、常に情報のやり取りをオープンにし、些細なもの、趣味的なものまであらゆる情報を得ることができる場を構築しました。

こうすることで教職員全員の頭の中が共通化され、そのことで心が一つとなり、体が動き出します。つまり、先生たちに「自ら意識を改革して進めてください」というただの声掛けではなく、システムをつくることでチームとして全体で動き出すことができました。

チームとして全体で動き出す「システムづくり」によって、先生たちの意識改革を実現する
チームとして全体で動き出す「システムづくり」によって、先生たちの意識改革を実現する

次回は、1人1台端末をつなぐシステムの構築について紹介したいと思います。

1人1台端末だけでは学びに役立つ道具として機能しません。事前の準備で一番重きを置いたのは、1人1台端末を何にするかよりも、データの共有や1人1台端末をつなぐプラットフォームをどう構築するかでした。

つづく

プロフィール

さとえ学園小学校 やまなかせんせい プロフィール画像

さとえ学園小学校

教諭 山中昭岳


なぜ、小学校の先生に?

給食、遠足、修学旅行。楽しく、変化いっぱいの毎日が過ごせ、誰よりも一番近くで子どもたちの成長する姿をみることができるから。

my belief

教師自身が一番の学び手であれ!!