SNSトラブル、どう指導する?

東京都八王子市立由井第三小学校

主幹教諭 八木美香

朝、担任のところに涙して話しに来た子がいました。

「あらまぁ、朝からかわいそうに、どうした? どうした?」と気持ちが落ち着くまで待ち、話を聞いてみると……

SNSのやり取りで言い合ってしまった。そのあと、SNS上で仲直り。そのはずが、朝会ってみたら、よそよそしい感じがする。SNSでこのことが広まり、友だちが減るかも。

と不安そうにしています。別のケースでは……

SNSの受信の音がうるさいとお家の人に機器を見られた。着信数の多さにお家の人が驚き、叱られた。さらに、インターネット機器を取り上げられた。取り上げられている間に、友だちがSNSでたくさん話をしている。自分だけ置いてけぼりになっている。友だちが減るかも。

と話す子どもがいました。

SNSという見えないところでの子ども同士の関わり。子どもにとって、自分の目の前で確認できないところで、友だちの会話が展開されるかもしれないという不安が募ります。

自分が子どもの頃にはなかった問題です。保護者の方も同じような困り感をもっているかもしれません。保護者から「インターネット機器ばかり見ています」「SNSのやり取りの数が多すぎて困っています」という話を伺うことがあります。ときには、「先生から言いきかせてもらえませんか」とお願いされることもあります。

1人1端末を授業で活用するのと同時に、家庭でも自由に使える機器を持つ子が増えています。「激増」と言った方がぴったりくるかもしれません。

先輩後輩の関係を学んだり、目上の人に敬語で話したり、仲間と真剣に話し合ったりすることに対して、ただいま修行中の小学生です。子どもたちが直接向き合わずに、相手の表情や声のトーンなどがわからない文字のみでやり取りをする大変難しい世界に放たれて、さまよってしまうのは、本当に心もとないと感じています。しかし、学校側はそのような機器を持つこと自体を制限する立場にはありません。

そうした状況の中で、私の所属校では次のような取り組みをしています。

学校の端末の使い方を丁寧に指導する

  • 全校児童で守るべきことをしっかり伝え、徹底させる。
  • 学級でのローカルルールをつくっていく(端末を使いながら、担任と子どもで積み上げていく)。
  • 学級で作成したローカルルールについて教職員同士で情報交換する。

学校からの呼び掛けで、家庭でのインターネットの使い方ルールを親子でつくる

  • 副読本『SNS東京ノート』を使い、各学級で学習し、その記録を家庭に伝える。※6学年では学習を通し、家庭でのルールを自分で考えてみるというところまでやってみました。今は、その成果を家庭に持ち帰っている段階です。
  • 親子でつくったルールを学校で作成した用紙に記入してもらい、学校に提出してもらう。どこの家庭でも取り組んでいることを伝え、その価値を理解してもらう。
  • 各家庭の親子ルールは、特に長期休業前に持ち帰り、家庭で実践するように呼び掛ける。
情報モラル用教材『SNS東京ノート』
情報モラル用教材『SNS東京ノート』
家庭でのインターネットの使い方ルールを考える
家庭でのインターネットの使い方ルールを考える

このようなルールづくりを進めていますが、ルールをつくるだけで子どもたちの悩みがなくなるわけではありません。担任としてはこのような対応をしています。

  • 子どもの話をよく聞いてあげて、何に困っているのかを整理してあげる。
  • 場合によっては、保護者にこの悩みを伝え、一緒に考えてもらい、親子で解決できるように促す。

「家庭での機器を与えたのは家庭だから、家庭に負ってもらう!」と済ますことのできないこの悩み。担任が直接関わることがない世界での悩みを、第三者として直接接することで、子どもたちが自力で解決できるようになるといいなと願います。子どもたちの悩みに接するたびに、自分も悩みます。

つづく

さとえ学園小学校 やまなかせんせい プロフィール画像

東京都八王子市立由井第三小学校

主幹教諭 八木 美香


なぜ、小学校の先生に?

元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。

my belief

「楽しい♪」の中に学びあり。