令和の日本型学校教育における体験活動 ~生活科・体験編~

さとえ学園小学校

教諭 山中昭岳

季節はすっかり冬となりました。季節感がなく申し訳ありませんが、引き続き川での体験学習についてです。

前号では、事前指導についてお伝えしました。

本号では、事前指導をもとに、実際の川において子どもたちが自ら動く姿、もしくは動かなかった姿を紹介します。

川に行く前日には、家庭学習として事前指導でつくったデータ(川の様子の写真に書き込みをしたもの)を自分の端末で確認するように指示します。これが明日の活動にとって重要な資料となります。

現在、1人1台の端末の持ち帰りがなかなかできていないということを耳にします。持ち帰ったとしてどう活用すればよいかわからないということが原因です。何も堅苦しく「家庭学習でも何かシステムを使って……」と考えるのではなく、学校の様子を写真に撮ってお家で見せる、ということだけでも持ち帰るメリットは大きいです。

また、計算や漢字学習といった基礎基本の家庭学習だけではなく、今回のケースのように自分でつくったコンテンツを前日に家庭で見なおして、当日の活動に臨むといった反転的な学習もできます。これもGIGAスクール構想における1人1台端末活用の家庭での活用事例としていかがでしょうか。

さて、実際の川での活動です。子どもたちの「生きものを捕まえたい」という“切実感”は、教師のどんな声かけより強いです。体験学習にはこの強みがあります。子どもたちが夢中になって活動する、体験学習そのものがしかけとなります。この「夢中」にいかに学びをつけ加えるかが教師の腕の見せどころ。今回であれば、子どもたちが夢中になりながらも事前の学びを生かした活動へと自分自身を導くことができるかどうかです。

2枚の写真を見てください。

1枚目は川に入ったばかりの様子の写真です。

川に入ってすぐは、とにかく事前指導は効きません。川での体験が初めての子どもも多く、事前指導を忘れて夢中になります。とにかく水の中に入ればどこにでも生きものがいて、捕まえられると思ってしまいます。


2枚目の写真は少し時間が経ってからの様子です。

ここでは事前指導が効いてきています! 子どもたちは生きものがいそうな場所を思い出し、事前学習で確認したことに気づき始めています。教師はここまで待てるかどうかです。


事前指導でもう一点大切なものがあったと思います。危険な箇所の指導です。実はこれが思い通りにいかなかったです。というのもこの「夢中」が原因です。子どもたちは頭ではわかっているのですが、生きものをとっていると周りが見えなくなります。危険な箇所は生きものたちも多くいる場所でもあるからです。私たち教師はこれを想定し、予めその場所には教師がいるようにしていました。

今回、活動予定にはなかったのですが、このように危険な箇所に行ってしまう様子を見て、万が一のケースを想定して、当日に「浮いて待て」の指導を行いました。


体験学習では、必要な対策をその場でできる臨機応変さと学習に対する教師の知識、そして経験も必要です。ここで、下見編で行った教師自身が川でどっぷりと楽しむ経験が生きてきます。

振り返りでは、事前指導と川での活動を比べながら行うことで、体験活動での課題も出てきます。それを次の体験活動につないでいきます。

関連記事

つづく

プロフィール

さとえ学園小学校 やまなかせんせい プロフィール画像

さとえ学園小学校

教諭 山中昭岳


なぜ、小学校の先生に?

給食、遠足、修学旅行。楽しく、変化いっぱいの毎日が過ごせ、誰よりも一番近くで子どもたちの成長する姿をみることができるから。

my belief

先生は子どもたちにとって空気のような存在