東京都八王子市立由井第三小学校
主幹教諭 八木美香
「対話する」ということを「『自分との違いを認め、その違いから学ぶこと』と定義して授業を組み立てている」という学校の話を伺ったことがあります。その学校の先生が、「『この授業での“対話”はこれです』ということではないのです。授業づくりの前に、一緒に学び合う仲間づくり、つまり学級づくりです」とお話しされていました。
前回の記事にも書きましたが、日常の「当たり前」が急速に変化していく毎日に、子どもの心に寄り添う難しさを感じるこの一年間でした。
そうは言っても、子ども一人ひとりは、人との関わりを求めています。友だち、友だち、友だち……「どう思われているか気になる」「一人は寂しい」「怖い」などいろいろな思いがあります。
友だちだけではありません。学校生活では友だち以外は「先生」となります。「先生! 先生!」と表現するのをためらう年頃になっている高学年の子どもたちです。1、2学期の総合的な学習の時間では、行事や卒業アルバムでお世話になる写真館の3人をゲストティーチャーとして複数回お呼びして、1人1台端末のカメラ機能を活用した写真をテーマに取り組みました。
写真の技が身に付いて、「素敵な写真を撮ることができた!」と喜ぶだけでなく、このゲストティーチャーたちのお人柄に魅せられて、「素敵な大人だ!」「あんな感じの大人になりたい!」と素直に表現する子どもたちがいました。
3学期は、「素敵な大人から学ぼう」ということで、これまで関わっていただいた和太鼓の先生、保健室の仕事のことで時々来校される学校薬剤師さん、5年生、6年生と2回の移動教室でお世話になった看護師さん、八王子空襲の語り部さんと接し、卒業前の充実した機会として計画しました。
特に、社会科で学んだ太平洋戦争の学習の関連として、八王子空襲の語り部さんの話を伺う子どもたちの姿には熱を感じました。80代になる語り部さんの来校を心待ちにし、質問したいことを整理したり、質問を短冊に書く活動では「読んでいただけるように大きな文字ではっきり書こう」と心遣いをしたりする姿が見られました。当日は、写真や本を見せつつ話してくださる語り部さんの姿に食い入るように見つめる子どもが多く、写真館のゲストティーチャーさんたちには複数回教えていただくチャンスがあったけれど、「今回は1回限り! 無駄にしないよ!」という心が伝わってきました。
語り部さんの「記憶より、記録ですよ」という言葉が心にささった子どもたち。「戦争は絶対にいけないことだから、記録をたくさん取ってあったから、今の自分たちに伝えられているんだ」「記録として本をつくったんだ」と感想を“記録”した子どもが多くいました。
ゲストティーチャーとの関わりには、毎回、子どもたちにとって多くの学びがあります。自分にはないもの、なかったもの、自分とは違うもの、素晴らしいものなど、「違いがあるから学びがある」に加え、ゲストティーチャーとの関わりには「発見がたくさんある!」と、子どもが素直に受け取ることができるということを再認識できた今年度でもありました。
今年度はあと十数日。卒業間近!
様々な学校を渡り歩いてきた私は、学校ごとに素晴らしいゲストティーチャーと出会うことができ、これも私の財産です。まだまだたくさんの人と出会いたい!!
東京都八王子市立由井第三小学校
主幹教諭 八木 美香
なぜ、小学校の先生に?
元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。
my belief
「楽しい♪」の中に学びあり。