活字を読みたくなる手立てを探る

兵庫県たつの市立龍野小学校

教頭 石堂裕

以前も「天声こども語」を用いた実践を紹介しましたが、令和4年度は、子どもたちの読解力を伸ばすための効果的なメディアの活用法について考えた1年でした。読解力とは、例えば、文部科学省は、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと」と定義し、その構成能力を三つ挙げています(図1)。

図 1 読解力と「読み解く力」の関係
図 1 読解力と「読み解く力」の関係

小学校は、6年間あり、小学校低学年と高学年では、知識の量も理解するスピードも異なります。そうなると、読解力につながる力が必要ではないかと考えるようになりました。私は、それを「読み解く力」とし「活字で書かれた内容が分かり、さらに、その内容と関連した事実に関心をもち、広く考えたり深く考えたりすること」ととらえました。要するに、読解力を伸ばすためには、「読み解く力」を鍛える必要があると考えたのです。

ここで、「読み解く力」を三つに分けて考えてみます。図2が示すように、子どもたちが、活字の内容が分かった段階から広く考えたり深く考えたりするためには、その活字内容に関心をもつことが鍵を握るのです。そうなると活字を読みたくなるような学習展開を考えておくことが求められます。以前に示した授業実践(活字内容を理解する手立てとして、NHK for Schoolの動画や写真を活用すること)もその一つです。

図 2 「読み解く力」を支える「関心」
図 2 「読み解く力」を支える「関心」

さて、今回紹介する授業実践は、最初に予想立てをし、その後、「天声こども語」を読む機会を取り入れる展開です。写真1は3年1組、写真2は3年2組の板書です。「天声こども語」の記事がネコの睡眠時間をゾウやチンパンジーとの睡眠時間と比較する内容だったので、両方とも漢字からネコへの関心づけを図った後、ネコの睡眠時間を予想することから始めました。

写真1 3年1組の場合
写真1 3年1組の場合
写真2 3年2組の場合
写真2 3年2組の場合

写真1の四角枠をみると、予想の段階で、ネコの睡眠時間が多くゾウは少ないことが分かります。しかし、写真2は、それがはっきりしませんでした。そうなると、本時の問いも一方が「どうしてネコはすいみん時間が多いのかな」に対して、もう一方は「ネコのすいみん時間は多いのかな、少ないのかな」と変わってきます。ネコとゾウを比較し、睡眠時間の要因を予想した後、「天声こども語」を手渡すとすぐ、全員が読み始め、「予想通りやった」、「へえ、そっか」といった記事の内容を理解したつぶやきが数多く聞かれました。主体的に活字を読んでいるのがよく分かりました。

写真3 記事を読む様子
写真3 記事を読む様子

最初の予想が授業展開に好影響したことが分かったので、今度は、同じ記事をもとに6年生で授業をしてみました。ただし導入は漢字ではなく、「動物の睡眠を決める要因」を予想することから始めました。すると、ネコもゾウも写真1と同じような予想となりました。3年生と大きく異なるのは、ネコとゾウの比較から要因を考える時間です。6年生では理科での既有の知識を用いた話し合いが展開されました。ただ、「天声こども語」を配付すると、3年生と同様に主体的に読み、「よし、予想通り」、「やっぱりそうか」といったつぶやきが聞こえました。

写真4 6年生の場合
写真4 6年生の場合

三つのクラス(約80人)に共通することは、活字を主体的に読む姿です。前回の実践のように、「天声こども語」を最初に配付しても、今回の実践のように後半で配付しても主体的に読む姿が見られたのは、子どもたちが関心をもつような手立て(予想立てとそれをもとにした対話の時間)があったからです。令和5年度も、「読み解く力」を育めるように、活字を読みたくなるような手立てを考えていきたいです。

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プロフィール

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教頭 石堂裕


なぜ、小学校の先生に?

身近な家族が教員だったため、小学生のころから「先生になる」と決めていました。小学校に決めたのは、教育実習での1年生との出会いです。授業の難しさを実感して、「もっと究めたい」と思ったことが、今も私自身を支えています。

my belief

「ピンチがチャンス!」

授業では、「ま(待つ)つ(つなげる)の(のせる)き(気付かせる)みと(認める)」