
さとえ学園小学校
教諭 山中昭岳
昨年から連載中の「低学年におけるプログラミング教育」シリーズ、実践編の第4回目を迎える本号では、音楽科での実践の様子をお伝えします。
参考:プログラミング教育シリーズの記事
<各教科の役割>
生活:演出を考える
国語:歌詞をつくる
音楽:曲をつくる
本実践は3教科の合科で行っており、6年生を送る会で感謝の気持ちを伝えるための作詞作曲に挑戦しています。
◆音楽科で曲をつくる
そもそもこの実践は、プログラミングとの出会いにより実現したものです。
音楽の目標である「曲想と音楽の構造などとの関わりについて気付き、楽しみながら音楽表現ができる」ことを、プログラミングを活用することで、本物の作曲ができるという体験にまで発展することができました。
▽めあて
6年生を送る会で歌う曲をつくろう
▽ルーブリック
(^^):自分たちでつくった歌詞のイメージにあった曲をつくることができる
スーパー(^^):6年生のお兄さん、お姉さんに感動してもらい、泣かせることができる
さて、今回活躍したのが、タブレット端末とアプリ「ボーカロイド教育版(YAMAHA)」です。
このアプリは、歌詞を入力し、その歌詞に音をつけていくことで実際にボーカロイドが歌ってくれます。つまり、従来の作曲アプリでは音だったものが、歌声となって表現されるのです。
このアプリによって、2年生の子どもたちは、自分たちのつくった歌詞が実際にどのような歌になるのかをはっきりイメージすることができました。
曲づくりは、様々なリズムやパターンを組み合わせていくという方法なのですが、プログラミングの手順でできることと、タブレット端末の活用により、手で操作しやすく、試行錯誤が容易なため、リズムやパターンの組み合わせ方について、こんなふうにつくりたい!という思いや意図をもって取り組むことができていました。
その結果、様々なリズムやパターンのおもしろさに気付きながら、たくさんの試行錯誤を重ねてまとまりのある音楽へとつくりあげることができました。

また、国語科でもキーワードとなっていた「制限」ですが、曲づくりにおいても出てきます。
実際の曲づくりの流れですが、つくる曲は、Aメロ、Bメロ、サビです。これら三つを3クラスがそれぞれ担当し、できあがったものを合体させます。
まずは、グループでの活動です。4人に1台のタブレット端末を準備し、それぞれのクラスでつくった歌詞に合う曲をグループごとにつくります。歌詞を入力し、一語ごとに音をつけながら、グループの友だちと協働でつくっていきました。

このとき、音楽の先生より「制限」の指導がありました。
音楽の先生が子どもたちに与えた「制限」は写真のとおりです。

この「制限」により、子どもたちの思考が拡散されたものから収束されたものへと変化しました。実はこれは曲づくりの基礎基本ともなっていて、子どもたちは自由にリズムやパターンを楽しみながらも音楽の構造を学ぶことができました。
結果、グループごとにかなりよい出来栄えの曲ができました。
しかし、6年生を送る会で歌う曲は1曲に絞らなければなりません。そこで、客観的に審査できるように、評価の視点を子どもたちと作成し、数値化して相互評価を行いました。
評価の視点は、①自分たちが歌える音幅か(歌いやすさ)②歌詞と合っている(6年生に伝わる)③メロディーのきれいさ(感動)というもので、5点満点で各自が採点し、合計して決定することにしました。
上位二つの曲が僅差だったため、さらに上記の三つの視点をもとに話し合い、やっとのことで決定しました。
そして、クラスごとにつくっていたAメロ、Bメロ、サビと合体させ、歌詞をつけて歌の練習へと続き、本番の卒業生を送る会での披露となったのでした。
実はこの実践には裏のねらいがありました。
次号では、この裏のねらいとともにこの実践をまとめます。
つづく
プロフィール

さとえ学園小学校
教諭 山中昭岳
なぜ、小学校の先生に?
給食、遠足、修学旅行。楽しく、変化いっぱいの毎日が過ごせ、誰よりも一番近くで子どもたちの成長する姿をみることができるから。
my belief
教師自身が一番の学び手であれ!!