東京都港区立芝浦小学校
主任教諭 八木 美香
今回も生活科の話題から離れて、教室での一場面をお届けします。
先日の国語の時間、『スーホの白い馬』の読み取りの活動をしていたときのことです。
白馬がスーホに育てられて大きくなった頃、スーホのひつじがおおかみに襲われそうになったところを白馬が守ってくれた場面。
音読の練習は学校でも家でもやっていて、「スラスラ読めるようになっているよ!」と自信をもっているところに……
T「教科書は机の中に片付けてしまいましょう!」
C「ん??なんだろう?」
C「何をするのかな?」
その後、下のシートが黒板に貼られました。
C「あれ?」
「え?」
T「どうしたの?」
C「違うんじゃない?」
C「なにが?」
C「あ!」
T「気が付いた?正しい文に戻してみましょう」
いつもの二人組(隣どうし)や班の仲間と相談が始まりました。
C「『友だち』じゃなくて、『兄弟』だと思います」
C「ぼくも同じで『兄弟』だと思います。そのわけは……先生、この文の先に書いてあったスーホの言葉を読んでほしいです」
T「どうしてそう思ったんですか?」
C「そこに証拠があるような気がするからです」
C「スーホは白馬に『おまえ』と言っていて、友だちには普通『おまえ』とは言わないからです。『これから先、いつもいっしょ』とも言っていたから、これまでより、近くなったというかんじがします」
C「おおおー!」
C「なるほどね」
C「『オマエ!』なんて言わない、言わない!」
当初、授業者としては、『友だち』→『兄弟』に気付くことで、スーホと白馬との心の距離が近くなったことについて読み深めようと思っていました。
私の中では、「さて、次の会話文にも広がってきたところで、心の距離が縮まるということについて、学習問題をがっちりと設定しなおすか」と、まさに本題へ入ろうとしていたところ……
C「ちがうところ、まだあります!」
と話し合いが続きました。
子どもも私自身も「何?」「何?何?」となりました。
C「『話しかけました』ではなく、『言いました』だと思います」
C「そこかぁ」
C「それは、わからないなぁ」
C「どうだったかなぁ」
C「『言うように言いました』では、おかしいから、『話しました』の方が良いと思います」
C「『言いました』『話しました』『話しかけました』の三つが出てきたので、いつもの二人組とか、班とかで話してみてください!」
司会の子が仕切り直しました。
『友だち』→『兄弟』のときよりも白熱した議論を始めた子どもたち。
C「わけを言わないと、『そうかぁ』ってならないよね」
C「『話しかける』は…」
C「『話しかけました』で良いと思います。『かける』がつくとやさしいかんじになります。ここでは、スーホが兄弟みたいに思ってやさしい気持ちになったから、やさしい雰囲気のする『話しかけました』が良いと思います」
C「『言いました』は一番遠い感じがします。一番近い感じが『話しかけました』だから、それだと思います!」
C「私は、生活科のお母さんインタビューのときに、お母さんがだんだんやさしい話し方になっていったんです。『話す』だけじゃなくて、『かける』が付くと、やさしいかんじがするから、あのインタビューのときは『話しかけてもらっていた』んだなって思います」
C「「「「おおおおおおおおおおおおおお!つながったぁーーー!」」」」
↑
本日最大の歓声。
クラスでの密かな喜びの一つが「つながる」になっている今日この頃。
友だちとの考えが巡り巡ってつながっても感動。
違う教科の学習がつながっても感動。
今回のこの「つながったぁーーー!」の感動はというと……
ただいま、国語の時に「つながった」、成長単元『大きくなったね』を実施中です。(詳しくは「 生まれたときの自分にタイムスリップ!」を参照)
自分の生まれた頃の大きさ(重さ)を水の入ったペットボトルでつくって、生まれたばかりの自分を抱っこしながら、
C「あら、赤ちゃん生まれたの?」
C「お名前は?」
C「あら、かわいい!抱っこさせて」
と、“近所のおばちゃんごっこ”をしたり、おなかの上に置いて、
C「生まれる前のお母さんが大変だったかも……」
C「生まれた後、お母さんの背中であばれただろう……」
と想像したりしてから、それを確かめることができるようなインタビューをお母さんにしてきたばかりの子どもたち。
『友だち』→『兄弟』なら、『家族』になったということ。ならば、『親子』も似ているようなものだ。
生活科の勉強とつながっている!という感動だったのでした。
このあと、スーホと白馬の心の距離が縮まったという読み深めには、自分自身の実感を伴いながらの活動となったのは言うまでもありません。
つづく
東京都港区立芝浦小学校
主任教諭 八木 美香
なぜ、小学校の先生に?
元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。
my belief
「楽しい♪」の中に学びあり。