新型コロナウイルス感染予防対策とスタートカリキュラム

東京都大田区立久原小学校

指導教諭 小笠原さちえ

新型コロナウイルス感染予防の影響で、1学期のスタートが見送られている学校も多く、子どもたちも教職員も先が見えない中、様々な不安を抱えていることと思います。

前回は、スタートカリキュラムのつくり方や校内体制などの手順をお伝えしました。今回は、感染症予防対策や休校明けに求められるスタートカリキュラムについて「のんびりタイム」と「なかよしタイム」を例にお伝えしたいと思います。

(スタートカリキュラムを構成する四つの活動の類型については、3月の記事をご覧ください。)

参考記事:「スタートカリキュラムの準備をしましょう」(2020年3月11日)

今年度のスタートカリキュラムは、例年以上に「方法」や具体的な「内容」よりも、「理念」をもとにして、それぞれの学校でのカリキュラムを作成することが求められると思います。また、休校中の授業時数の扱いをどのようにするのか、振替がどのようになるのかなど、おそらく自治体によって異なるため、様々な状況を踏まえたカリキュラムの作成をしなければなりません。

平成27年1月に文部科学省・国立教育政策研究所・教育課程研究センターから全国の小学校に配布された「スタートカリキュラムスタートブック」には、以下の通り示されています。

スタートカリキュラムとは・・・

小学校へ入学した子どもが、幼稚園・保育所・認定こども園などの遊びや生活を通した学びと育ちを基礎として、主体的に自己を発揮し、新しい学校生活を創り出していくためのカリキュラムです。

今年度は、特に「安心」や「学校や地域への愛着をもつ」ということがキーワードとなるでしょう。

休校中の学校は休校明け、また、新年度の授業が始まっている学校は現在、グループ活動、手をつなぐ、歌ったり大きな声を出したりする、など人と関わることや活動の多くに制限がかかることが想定されます。

■のんびりタイムについて

(一人ひとりが安心感をもって生活することをねらいとした時間。安心をつくる時間。)

例年、席をグループにしたり、好きな所で集まったりして行っていた「のんびりタイム」では、「一人ひとりの間隔を保って活動する」という対応が求められると思います。本来、安心感をもつことができるように、友だちとの自然な関わりが生まれることを大切にしたいところではありますが、今年度は、幼児期の経験を生かして、「自分の好きな遊びを選んで、集中して取り組む」ということに重点をおくとよいでしょう。

多くの園では、登園後など自分で選んで自由に遊ぶ時間があると思います。そこで、「のんびりタイム」(一人ひとりが安心感をもって生活することをねらいとした時間。安心をつくる時間。)では、折り紙・粘土あそび・お絵描き・工作など子どもたちが幼稚園や保育所・こども園で取り組んできたことができるようにします。そして、自分で選んで、自分の席で取り組めるようにしますこの時、子どもたちが好きな音楽をかけるとより安心につながるでしょう。子どもたちに好きな歌を聞いて、順にリクエストに応えていき、教師が、「今日は〇〇さんのおすすめの音楽です」と紹介すると、紹介された子は、きっと喜んでくれると思います。また、「○○さんの好きな音楽とわたしの好きな音楽は同じだ」と思うと、友だちへの親しみをもつことにつながるかもしれません。

なかよしタイムについて

(安心感をもって、新しい人間関係を築いていくことをねらいとした時間。)

次に、なかよしタイムです。ここでも、今までは、友だちと手をつないだり、近づいて話したりと、ふれあいを中心とし、関わることを大切にしてきたと思います。

今年度は、教師が子どもたちの間に入って丁寧に「心をつないでいく」ことが求められると思います。一人ひとりの間隔に注意して、みんなで一緒にダンスを踊ったり、無言でできるジェスチャーゲームやじゃんけんゲームなどのゲームや手遊びをしたりすることが考えられます。また、実物投影機などを使って絵本を見せれば、子どもどうしの距離を保ちながら、読み聞かせをすることも可能です。このように、活動に制限があっても、一体感を味わい、「みんなで一緒に遊ぶと楽しい!」と感じることができる活動を取り入れるとよいでしょう。子どもたちの心の距離を縮めるようにしていきます。

今回は、現段階でのスタートカリキュラムに求められることと、できることを考えました。今後の状況によっては、この限りではないと思います。

多くの子どもたちが笑顔で学校生活をスタートし、楽しみながら自分の力を発揮したり、伸ばしたりすることができる日が1日も早く来ることを、心から願っています。

未来を切り拓き、たくましく生きていくことができる子どもたちを育てていく立場にある私たち教師は、どのような状況であっても前向きに、できることを考えていきたいものです。

つづく

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プロフィール

さとえ学園小学校 やまなかせんせい プロフィール画像

東京都大田区立久原小学校

指導教諭 小笠原さちえ


なぜ、小学校の先生に?

小学校の卒業文集に「幼稚園の先生になりたい」と書いたと思います。幼稚園教諭として10年間勤務した後、「幅広く子どもたちと関わることができる人になりたい!」と思い、現在の道に至りました。

my belief

「笑う門には福来る」

「笑顔がいっぱいの教室にも福がたくさん訪れる!」と信じています。