兵庫県たつの市立新宮小学校
主幹教諭 石堂裕
図1は前時の学習問題で、図2は本時の学習問題です。
さて、この二つの問題を消費者教育の視点で比べてみると、図1では、多めに購入すると1個単価が安くなり買い置きもできますが、図2だと多めに買うと、すべて消費すれば得ですが、そうでなければ損になり、食品ロス問題にも影響してきます。つまり、エシカル消費を前時とは違った視点から考える問題でもあります。
図2の問題について、前の時間と同様に、みんなの予想を聞いてみました。すると、①を選択した子が10人、②を選択した子が10人、そして③を選択した子が14人でした。その後、一人ずつ、自分のノートに理由を書きました。条件は「理由に算数を入れよう」です。前の時間には、図1について意見交流する過程で、算数を用いた理由付けによって説得力が増すことを理解しているため、本時は最初から条件を提示したわけです。ここに既有の知識(私は今回の既有の知識は「手続きに関する知識」と捉えています)を活かしたいと考えました。
さて、写真1は、個人の理由を同じ選択をした友だちとの間で、根拠となった考えを共有しているところです。共有された主なものを取り上げて比べたいと思います。
一つは写真2のホワイトボードによる記述です。このグループでは、1玉を基準に考えた時の値段を根拠に①を選択しています。必要分を使用した残りも使うことで、食品ロスにならない考えを含んでいることを読み取ることができます。もう一つは、写真3のホワイトボードです。このグループでは、③を選択し、その根拠に必要な量だけ買うといったエシカル消費を軸に考えています。そのため、算数を使った根拠に値段に関する記述はありません。
この二つのホワイトボードから全体で話し合う視点を「値段」、「数量」に焦点化して考えることにしました。みんなで算数を理由に意見を出し合った結果、写真4のような板書の記述となりました。この学習では、①~③のどれかが正しい訳ではありません。「何を基準に買い物をするか」と「自分なりの選択の根拠に算数を用いているか」を観察することが大切です。こういった学習過程では、授業の終末に書く振り返りコメントが解釈するための資料となります。
写真5にその一つを示したいと思います。写真5に示すA児は、値段でもエシカル消費でも記述をしていますが、どちらかというとエシカル消費への意識が勝っていると解釈しました。とはいえ考えの根拠には、しっかりと算数を用いた考え方をしていると判断できます。
この学習には、さらに発展的な目的がありました。冬季休業期間中のお正月準備で、SDGsに関する取り組みを実際に行えるかどうかということです。買い物と同時にコラボノートに記述したのですが、例えば、年末の買い物の視点では、食品ロスやエシカル消費に関わることはもちろん、「賞味期限を考えて手前の陳列商品を選択した」といった記述も多数見ることができました。
このように、算数の学習に身近な生活場面を取り入れ、その内容と消費者教育の視点を加えながら学習設計をすることで、子どもたちは、実際の消費生活でも生かすことのできる知識になることが分かりました。
つづく
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プロフィール
兵庫県たつの市立新宮小学校
主幹教諭 石堂裕
なぜ、小学校の先生に?
身近な家族が教員だったため、小学生のころから「先生になる」と決めていました。小学校に決めたのは、教育実習での1年生との出会いです。授業の難しさを実感して、「もっと究めたい」と思ったことが、今も私自身を支えています。
my belief
「ピンチがチャンス!」
授業では、「ま(待つ)つ(つなげる)の(のせる)き(気付かせる)みと(認める)」