座談会・生活科が10倍楽しくなる教科書

2. 「三つの柱」を活用すれば、先生の負担を軽減しながら授業の質を担保できる!

誰にでも一目でわかる、「めあて」と「評価」のポイント

小笠原 何をつくるかより、私は子どもたちに、遊びの中でいろいろなことに気付いてほしいと思います。そのために、子どもたちが様々なことに気付くことができるような環境を教師がつくることが大切です。

山中 生活科のものづくりの特徴は、それが生活につながっていることです。オモチャをつくって、それを使って実際に遊ぶことができる。

小笠原 作品の出来栄えではないですよね。その子がどんなことを試して、工夫してつくったかという、でき上がるまでのプロセスもすべて含めて評価する

山中 じゃあそれをどう見取るか、どう評価するか。先生としてそれなりの経験があれば、感覚的にわかるけれど、若い先生たちのために、この教科書には「見取り」のヒントを、できるだけ盛り込みたいと思っていました。写真やイラストを使って、子どもたちの「つぶやき」をたくさん載せたのも、そういう意図からです。

教科書をつくるにあたって、私は振り返りから次の学習活動への流れを意識しました。(小笠原さちえ)
教科書をつくるにあたって、私は振り返りから次の学習活動への流れを意識しました。(小笠原さちえ)

小笠原 「振り返り」にも重きを置きましたよね。そこから次へつなげていけるように。

山中 どのページでも、「めあて」と「評価」がちゃんとわかるようになっています。評価で不可欠なのはゴール設定ですから、この学習は何のためにするのかを、最初に子どもたちと一緒に、明確にしておくことが大事です。そのために、各小単元のタイトルが書かれたページには見開き左下の部分に「学習のめあて」欄を置きました。そしてそこに、育成すべき資質・能力の「三つの柱」に基づいた「学習のめあて」を、低学年の子どもにも、わかりやすい言葉で示しました。

2020年度版 生活科教科書上巻p.60
2020年度版 生活科教科書上巻p.60
育成すべき資質・能力の三つの柱に基づいた「学習のめあて」をわかりやすい言葉で説明しています。
育成すべき資質・能力の三つの柱に基づいた「学習のめあて」をわかりやすい言葉で説明しています。

具体的にいうと、それぞれの小単元について、「こんなことが知りたいな。どんなことができるかな?」、「これを伝えたいな」、「もっとやってみよう」という三つのポイントを、子どもにも理解しやすいよう、アイコン付きで載せたわけです。

小単元の最初で、この「学習のめあて」を見ておくと、先生にはその小単元でおさえるべきポイントが、子どもたちには、その小単元で「何をどう学ぶのか」が、はっきりわかると思います。これらの「めあて」は、活動の「評価」にもつながるので、活動をやり終えたあとで、また確認してもいいですね。個人的には、先生が評価するためというより、子どもどうしの評価、あるいは子ども自身が自らの成長を評価するために、使ってもらえたらと思っています。

小笠原 現場の先生たちみんな「学習のめあて」を、子どもの言葉で伝えたいということで考えが一致しました。例をあげると、上巻60ページ、「なつをもっとたのしもう」の小単元は、「なつのひには、どんなことをたのしめるかな」、「なつだからできるあそびはなにかな」、「どうすればもっとたのしくあそべるかな」の三つが、「学習のめあて」です。

山中 自校の先生たちが授業を参観に来たときにも、めあてとルーブリックの応用は、必ず見せています。先生にも子どもにも、わかりやすい評価の規準になりますからね。とはいえ、ルーブリックをつくるのはなかなか難しいので、この教科書では、「学習のめあて」をどんどん活用してもらいたいと思います。

子どもたちは学び方を学び、先生の負担は軽減する

石堂 ところで、授業づくりで一番難しいのは、「問い」のつくり方ですよね。若い先生が一番困るのもこの部分です。そこで下巻58・59ページを見てください。見開き左上、「生きもののひみつをつたえよう」とありますが、このタイトルは、本時で何をすべきかが端的にわかるようになっています。

それからタイトルのすぐ下には、黒い大きな文字で、「子どもの思いや願い」が必ず書いてあります。

ここでは「わかりやすくつたえたいな」とあるのがそれですね。この部分は、先生が子どもたちの気持ちを感じ取るための、ヒントにもなると思います。これに「学習のめあて」を加えて授業の構成を考えていくと、授業準備を効率化して、先生の負担も軽減できるし、なおかつ授業の質も担保できます

2020年度版 生活科教科書下巻p.58
2020年度版 生活科教科書下巻p.58

山中 黒板にその小単元のタイトル=その時間にすること、ここでは「生きもののひみつをつたえよう」を書き出し、ルーブリックとして、見開き左下の「学習のめあて」にある言葉を、書き出すことができます。教科書をもとに、すごくシンプルに、実際の授業への落とし込みができるんです。

「問い」をつくるのは教師の醍醐味で、本来楽しいものですが、あまり慣れていない先生や、ベテランの先生でも時間がない場合は、

我々が苦労してつくった(笑)「学習のめあて」を、どんどん活用してもらいたいと思います。それだけで、何をするのか、何を身に付けるのかが明確な授業ができますね。

「めあて」をもとに話し合うと、課題も子どもたちからが出てくるようになるんですよね。「今日は何する?」と聞くだけで、あれをやろう、これをやろう、この前はこうだったから、今日はこうしてみようって、どんどんアイディアが出てくるんです。

この教科書で、子どもたちに「問い」をつくる技術を学んでもらえれば、それは総合力につながっていきます。「いかに教師が課題を設定できるか」から、「教師が設定しているように見えながら、いかに子どもたち自身の発想を、課題に取り込んでいけるか」へと変わっていく。それを生活科から実現できるのです。

この教科書で子どもたちに「問い」をつくる技術を学んでもらえれば、それは総合力につながっていきます。(山中 昭岳)
この教科書で子どもたちに「問い」をつくる技術を学んでもらえれば、それは総合力につながっていきます。(山中 昭岳)

石堂 子どもたちは、生活科でやったことは、次に算数でも、国語でもできるようになっていきますよね。低学年ほど、活動の楽しさが学びにとって絶対的に必要だから、生活科から始めたほうが、できることがスムーズに増えていく。そういう子が3年生になると、総合的な学習の時間がスタートしても、確実に学習を自分のものにしていけます。

山中 そういう意味ではこの教科書って、「学び方を学ぶ教科書」でもあるんですよね。


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